堤未果『報道が教えてくれない アメリカ弱者革命』

晴。
朝から工事の音があんまりうるさいので、NC(ノイズ・キャンセリング)ヘッドホンで音楽を聴いて過ごすしかない。ということで、■ベートーヴェン交響曲第八番(カラヤン1962)。昨日テレビのCMでこの曲の冒頭が流れてきて、おおと思ったので聴いてみた。たぶんベートーヴェン交響曲の中で一番人気のない曲だろうが、何故でしょう。この曲は、交響曲第七番の成功に気をよくしたベートーヴェンが、張り切って創った曲なのだ。シンプルで溌溂として、最上のハイドンのようでもある。好きな曲です。■ブラームス:ピアノ協奏曲第二番op.83(ギレリス、ヨッフム)。ギレリスは、ウェットな演奏を好みがちな日本人には、なかなか合いにくいかも知れない。実際、最近ギレリスはあまり話題にならないような気もする。しかし、この明晰さと構築性、技術の高さと音の美しさは、非凡であると云わざるを得ないだろう。明晰なブラームスというのも、いいものではないだろうか。

ブラームス:ピアノ協奏曲第1&2番、他

ブラームス:ピアノ協奏曲第1&2番、他


堤未果『報道が教えてくれない アメリカ弱者革命』読了。のちの『貧困大国アメリカ』に直結する、著者の原点のひとつと云うべき著作ではないか。アメリカ軍が弱者を騙し同然で、軍にリクルートしてイラクの戦場へ送る手口がなどリポートされている。アメリカ人(アングロ・サクソンと云った方がいいか)はよく「正義」ということを言うが、その「正義」とは如何なるものなのか。西洋人に染み付いた、「論理」で語るというのは、どんなことでも「証明」してみせることができるということを感じる。西洋人には、感情と結びついた「論理」などというのは矛盾の塊だろうが、じつは論理が空疎にならないためには、感情の裏打ちが絶対に必要なのだ。著者は日本人らしく、感情のゆらぎというようなものが、本書の背後に透けて見えている。それを馬鹿にするより、むしろ評価したい。怒りと共感が、本書を書かせているのだ。
 しかし、イラクで戦死した兵士の家族に支払われるのが、たった一三〇万円だとは…。お金の問題ではないかも知れないが、アメリカという国が兵士というものをどう考えているか、よくわかる話である。また、本書には、人を殺すというのがどういうことなのか、イラク帰還兵の口から何度も語られている。兵士を戦場に送り出す人間は、そんなことは無視するのである。そんなことを言うと、「平和ボケ」という人がいるが、それなら「平和ボケ」でも結構な話だ。そうそう、本書によれば、多くのアメリカ人は、日本が「平和憲法」を持っていることを知らないらしい。自分は「平和憲法」については、素人の外国人が理想で作った憲法の幸運を喜ぶしかないと思っている。本当にラッキーなことだった。
 ちなみに、頭のよい日本の知識人たちは、どうも堤未果氏をちょっと軽く見ているというか、正直言ってバカにしていると思えないでもない。自分の尊重する田中秀臣氏なども、堤未果氏をブログでバカにしている感じだった(参照参照)。でも、自分はバカな素人なので、堤未果氏の本に欠点はあれど、自分の直感を信用することにしている。
報道が教えてくれないアメリカ弱者革命 (新潮文庫)

報道が教えてくれないアメリカ弱者革命 (新潮文庫)

ロールズを読む。

しかし、その田中秀臣氏のサイトで拾ってきた動画。内容を信じるかどうかはあなた次第。自分の判断を云えば、ここで語られているのは本当のことばかり。もう遅いけれど。後は、消費増税で景気が落ち込まないことを祈るしかない。


マイルス・デイヴィスを聴く。
今いちばん怖いのは、政府が法解釈を変えて、集団的自衛権を認めてしまうことだ。憲法の改正なら、最低でも国民投票が必要だが、法解釈の変更は、何も必要でない。国民の危機意識も薄く、このままだと世界中の戦争に自衛隊が参加する道を開くことになる。正直なところ、法解釈の変更に消極的な公明党頼みなところが大きい。マスコミは、ことの重大さを認識して欲しい。とにかく、国政選挙は当分ないのだ。それにしても、どうしてそんなに戦争がしたいのか。中東の民間人たちを見て欲しい。多くの人の生活が地獄のようになり、意味なく死ぬ人がたくさんいるのだから。平和ボケでいられる国のありがたさを知るべきだ。アメリカのような恐ろしい国に追従することは、じつに愚かしい。日本がどれだけ尽くしても、対等な仲間だと見做してくれると思うのは甘すぎる。そんなことはあり得ないのだ。余計な戦争の肩代わりをさせられるだけのことである。日本のためになどならない。とにかく、アメリカが考えているのは、自国の利益のことだけである。そこは絶対に忘れてはならない。
 蛇足しておけば、自分は別に反米というわけではない。ただ、アメリカは恐ろしい国だということだ。そして、自分の国の利益のことしか考えていないということ。ゆめゆめアメリカの言う「正義」など、信じることはできないということ。「自衛権」などというのは、我々なら日本のそれということである。アメリカが攻撃されたら、日本に関係なくとも日本もその戦争に参加するというのは、まったくおかしな話である。そして、いま安倍首相がやろうとしているのは、そのおかしなことなのである。
 さらに蛇足だが、世界から見ると、日本はある意味で相当に「胡散臭い」国である。その胡散臭さで、世界を変えてしまえたらなあと思う。自分たちのような日本の「バカ」を、世界中に輸出するのだ。そうすれば、もう少し世界も気が抜けるのではないか。そんなことは、日本にしかできないような気がする。