小松英雄『いろはうた』

晴。
小松英雄『いろはうた』読了。誰もが思うことだろうが、本書は上質のミステリーのように、謎解きが楽しい。もちろん著者は謎解きを書いたわけではなかろうが、「いろは四十七字」に纏わる謎が、次々に現れて解明されていく。そして、国語のアクセントの面から「いろは」に光が当てられ、それは中国語(漢文)の音韻の、日本人における理解の問題に繋がっていく。このあたりは学問的にどうなのか素人の自分には判断の仕様がないが、論理は尽くされている。そして最後に、定家が登場し、仮名遣いの問題にまで話が及んでいく。洵に間然とするところがない、見事な論考だ。それにしても著者の学問的膂力には驚かされる。単に国語学の考察に留まらない、懐の深さが感じられる。
 ちなみに、誰もが気になる「いろは」の作者だが、著者はもちろん弘法大師作は採らない。でも、真言宗系統の僧侶であったろうとのことである。

いろはうた―日本語史へのいざない (講談社学術文庫)

いろはうた―日本語史へのいざない (講談社学術文庫)


音楽を聴く。■ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第四番op.40(ミケランジェリ)。