小林愛実はいいピアニスト

あんまりいい演奏なんで、貼ってしまいます。ジュニア・オーケストラだが、何という上手さ! これだけでもびっくりなのだが、小林愛実のピアノがさらに輪をかけていい。聴き始めたら止められなくなってしまった。これはもう才能がある若い子(この演奏では、まだ中三)というよりは、既に一廉のピアニストと云うべきだな。しかし、彼女の魅力はどこにあるのだろう。すごく惹き付けられるのだが、その魅力を言語化しようとすると、案外むずかしい。見ていてわかるとおり、彼女は没入型のピアニストなのだが、決して演奏の端正さを失わない。曲の構造もはっきり聞き取れるし、さらに今回思ったのだが、かっちりしたタッチも魅力的。既に相当完成したピアニストだ。これがさらに歳とともに伸びていくとすごいのだが。
 正直言って、ショパンのピアノ協奏曲第一番でこれだけの演奏をするのは、そう簡単ではないよ。でも、ショパンがこの曲を書いたのも、まだ一〇代の時だった筈。うーむ。(AM0:53)

マジか、この演奏…。いま一線で活躍しているピアニストでも、これほどのベートーヴェンを聴かせられる者が何人いるか。しかし、まだツアー・ピアニストになっていないよさというものもあるかも知れない。コンサートに出づっぱりのピアニストになると、どうしてもルーチンになりがちなので、ここまで新鮮に弾けるかどうかわからないということは、あるかもしれないから。でも、ちょっとこれの終楽章、聴いてくださいよ。「アパッショナータ」の終楽章だよ。(AM1:27)

他にも小林愛実を色々聴いてみた結果思うのは、やはり年齢が上の時の演奏ほど情感が深くなっている。ちゃんと進歩しているということで、大したもの。これからメジャーなコンクールに出ていい成績を収めるかもしれないけれど、あまり早く売れっ子にならない方がいいような気もする。もうゆっくりキャリアを積んでも、充分いけると思うよ。いまでも中毒になりそうなくらい個性的だから、じっくり実力を伸ばしてほしい。ショパンベートーヴェンを共に聴かせるピアニストは、とても少ないのだから。(AM2:00)