吉田伸夫『明解 量子宇宙論入門』

休日。晴。多少涼しい。
吉田伸夫『明解 量子宇宙論入門』読了。自分のように、専門的な素養はないものの物理が好きな人間には、著者の書く本はまことに面白い。本書も、学部学生程度の予備知識で、最先端の宇宙論の世界を垣間見せてくれる。例えば、宇宙論で使われるフリードマン方程式
     
が、重力場の方程式から、意外に簡単に導出できることがわかる。インフレーション宇宙に関しても、啓蒙書で名前はよく出てくるが、ここでは数式を用いた議論が出来るのが嬉しい。取り敢えず、各章の見出しを記しておこう。第一章「一般相対性理論に基づく宇宙モデル」、第二章「場の量子論的な振舞い」、第三章「インフレーションのメカニズム」、第四章「暗黒エネルギーとは何か」、第五章「インフレーションを検証する」、第六章「原初的原子からの誕生」、第七章「振動する宇宙」、第八章「永遠に生み出される宇宙」、第九章「物理定数の異なる宇宙」、第一〇章「マルチバース人間原理」、第一一章「多世界解釈」。特に、第一一章「多世界解釈」において、量子力学の「デコヒーレンス解釈」にかなりページを割いているのは勉強になった。確かにこれは、素人感覚でも、「多世界解釈」よりも受け入れやすいものである。これに拠れば、いわゆる「シュレーディンガーの猫」で猫の生死が同時に存在するというのは「コヒーレント状態」であるということであり、実際の古典物理学的存在である「猫」は、基本的にコヒーレント状態でいられることはなく、生き死には重ね合わされず、つまりはデコヒーレント状態にあるというわけだ。いやあ、面白かったです。

明解量子宇宙論入門 (KS物理専門書)

明解量子宇宙論入門 (KS物理専門書)


音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ・ソナタ第八番(バレンボイム)。前にも書いたが、スタジオ録音なのにも拘らず、ライヴ感に満ちた演奏だ。何かが降りてきたような、というが如き陳腐な表現でしか表せないような、神がかった演奏になっている。