吉本隆明『フランシス子へ』

曇。
図書館から借りてきた、吉本隆明『フランシス子へ』読了。吉本さんは死の九箇月前、自分ともっとも気の合ったという猫の「フランシス子」を亡くした。本書はその猫やその他諸々について、自身の死の三箇月前に語った本である。図らずも、極めてうつくしい「(恐らく)最後の本」になった。「遺言」と云ってもいいのだろうが、淡々と易しくないことを語っている。感動的でもあるし、「ホトトギスはいない」(?)など、どういうつもりで語っておられるのか、ちょっと笑ってしまう話もある。(これは決してボケではない。たぶんユーモアなのだと思う。)僕は吉本さんのむずかしい本も好きだが、こうした本も劣らず好きだ。単なる「知識人」には、こんな本は作れない。しかし、今は始めと終りを直ぐにくっつけて、中間がないというのは自分には痛かった。その中間、直ぐに決めつけてしまわないのが大切なのだと。本書の最後は、ホトトギス実在にあっさり転向して終る。いいなあ。

フランシス子へ

フランシス子へ