石井好子『女ひとりの巴里ぐらし』

曇。
石井好子『女ひとりの巴里ぐらし』読了。石井好子は、有名な料理エッセイ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』の著者であり、本書は著者の本業だった、パリでのシャンソン歌手としての一種の自伝である。鹿島茂の文庫解説(必読)によれば、著者が歌っていたキャバレー「ナチュリスト」は、パリの同種の店の中でも、相当にレヴェルの高いところらしい。その中でも著者は最高の給料取りだったのだが、キャバレーの同僚たちとの交流がメインである本書の、どことなく物悲しい雰囲気からすると、そんな感じではなく、著者の奥ゆかしさがわかってしまうのだ。また、文章もよく、それは、文庫巻頭の三島由紀夫の推薦文が(これも必読)褒めているとおりである。自分はもちろん現実のパリなど知らないが、著者の描いているパリは、他の日本人たちの描き出したそれらにも増して、パリらしいパリなのではないか、と思ってしまうくらいだ。酸いも甘いも、人生のある街。

女ひとりの巴里ぐらし (河出文庫)

女ひとりの巴里ぐらし (河出文庫)

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