江沢洋『だれが原子をみたか』/澁澤龍彦編『オブジェを求めて』

晴。
音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ協奏曲第五番K.175(バレンボイム)。突然聴きたくなったので。実質的にモーツァルトの最初のピアノ協奏曲であり、作曲されたのはモーツァルトが十七歳くらいのときだが、溌溂としていて、じつにいい曲だ。モーツァルト自身も気に入っており、晩年まで演奏し続けたという。仮に無名氏作だったとしても、確実に後世に残っただろう。そしてまた、バレンボイムの弾き振りがぴったり。

江沢洋『だれが原子をみたか』読了。「原子」というものの存在が認められるまでの歴史を、意欲的な高校生(もしかしたら中学生)なら読めるほど丁寧に描いた本。ただし、やさしくはない。元は少し古い本なのだが、扱っているのは二十世紀初頭まで(量子力学はほとんど扱わない)なので、問題はない。面白いのは、過去に行われた有名な実験を、もう一度自分たちの手でやって見せているところである。これはいい試みだ。理論的には今では当り前になっていることが、大変な叡智によって解決されてきたことがわかるのである。
 それから、瑣末なことかも知れないが、本書は若い人や科学に興味のある人に読んで貰いたいような本なのだけれど、文庫で1420円とは、そういう人たちがなかなか手に取りにくい金額になってしまっているのではないか。出版されるだけでありがたいと思えということなのだろうか?

だれが原子をみたか (岩波現代文庫)

だれが原子をみたか (岩波現代文庫)

澁澤龍彦編『言葉の標本函 オブジェを求めて』再読。最近の枕頭の書になっていたもの。しかし、よくこれだけの断片が集められたものだな。それも、すべて澁澤好み。記憶力も含め、すごい実力だ。
ラン・ランのピアノは今まであまり感心したことがなかったが、プロコフィエフソナタ第七番を You Tube でちょっと聴いてみたら、なかなかよかった。この人のピアノは乱暴なところもあるが、抒情性というか瞑想性というか、曲に没入する力はあると思う。この演奏はテンポは遅めだが、この曲にここまで美しい部分がたくさんあるとは発見だった。第一楽章を貼っておく。ラン・ランって動画で見ると見た目がつい面白いのだが、そんなところばかり見ているものではないな。(AM0:48)

スクリャービンエチュードop.8-12の演奏は、これはもう名演と云うしかないでしょう。やるな、ラン・ラン!

関係ないのだけれど、リヒテルの弾くブラームスのピアノ小品集op.119があったので。素晴らしすぎる。しかし、リヒテルのライブ録音は、何が埋もれているかわからないな。

たまたま聴いてみた、上法奏(Kanade Joho)というピアニストのブラームスインテルメッツォop.117-1。日本人らしい、繊細な演奏。わるくないね。(AM1:38)