曇のち晴。
久生十蘭『十蘭ビブリオマーヌ』読了。河出文庫の十蘭短編コレクションも、これで六冊目。これだけ出ていながら、どの巻も見劣りしないのがすごい。本巻も絶品揃いだ。読む人によって何を取るか異なるだろうが、誇り高き高田屋嘉兵衛を描いた「国風」、絶品コメディ「レカミエー婦人」、水商売の女の純真を描いた「あめりか物語」などに、自分は感銘を受けた。それにしても、今更云うまでもないことだが、題材の多様さというか、ほとんど信じられないほどのペダントリーの鮮やかさには、驚かされるというも愚かであろう。どこで十蘭は、これほどの「雑学」を仕入れたのだろうか。こういう知識は、古典だけを読んでいては得られないものである。そして、完璧なスタイルとミスティフィカシオン。こんな作家は、現代にはひとりもいない。
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仕事場で読んでいた岐阜新聞の本日付朝刊で、日本画家の松井冬子さんという人を知る(Wikipedia)。既に有名な人らしいのだが、無知だった。非常に個性的な、繊細かつグロテスクというのか、強烈な画風だ。代表作の画像などは、当人のHPで見られる。
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「通販生活」最新号の、東浩紀と高橋源一郎の対談を読む。このところ自分は、東浩紀さんに関心を失いつつあるのだが、というか、この対談を読んでもそれはあまり変らないのだが、やはり東さんの存在は頼もしいというか、安心させられてしまうところがある。若い人たちの期待を集め、真面目に日本の課題に向き合っておられるのは、なかなか他人に出来ることではない。自分より若い人でこういう人がいるから、自分の如きは好きなことがやれるという気がする。こういうのは、最低の人間ですか? そう云わないで欲しいと思う。自分などにやれることは、たかが知れているのだ。林達夫の言うような、文化の発酵素としてのスノッブくらいには、なりたいものだが。
源一郎さんのスタンスは好きだ。この人は「知識人」から馬鹿にされまくっているのに、そしてなかなか褒めてくれる人もいないのに、この人しか出来ない、大切なことを、やってくれているのである。吉本隆明さんは、源一郎さんのことを本当に評価していたな。