佐々木毅『宗教と権力の政治』

休日。早朝、雨。のち曇。
イオンの写真屋。カルコス。

佐々木毅『宗教と権力の政治』読了。副題「『哲学と政治』講義2」。前著はとても面白かったが(参照)、本書も期待に違わなかった。ヨーロッパの中世から絶対王政の直前まで、政治と宗教の複雑な関係を解きほぐしている。前著もそうだったが、論述の柱がしっかりしていて、大局的な観点から政治について語られているのが、並でない。中世では、世俗権力よりも教会の力の方が強いのだが、宗教改革がいかに本質的に事態を変えたか、計り知れぬものがあったことがわかる。ルターは「信仰のみによって救われる」と言ったが、これは結果的に、教会の力を削ぎ、これを大きく変質せしめることになった。そして、ヨーロッパが旧教と新教に分裂し、血で血を洗う凄惨な闘争が行われたあと、政治と宗教は次第に分離していくことになる。大雑把に云えばそんなところだが、本筋を見失わずに、細部に肉付けしていく本書の手腕は見事だ。ロジックも誤魔化されていない。政治や政治学に興味のある人には、得るところが多い本だと思う。