山下達郎『OPUS』Disc1

買ったまましばらく放置してあった山下達郎の『OPUS』であるが、やっと Disc1を聴いてみた。感傷警報発令である。僕はほとんど感傷というものを感じないが、山下達郎の初期の音楽は(他に、松田優作の映像、開高健の文章なども)例外だ。聴いていた頃の情景が浮かんでくるからである。もっとも、確信犯的に山下達郎の音楽を同時代の音楽として聴き出したのは、アルバム『RIDE ON TIME』からなのであるが、思い入れとしては、まだよくわからず聴いていた『SPACY』や『GO AHEAD!』の方が強い。これらにどっぷり浸かっていたのは、じつはバブルの余波が残っていた頃だったのだが。東海道本線を乗り継いで京都から東京まで行く車中、ウォークマンでこれらを聴いていた情景を思い出す。
 さても、今回、音質を大幅に向上させたバージョンで聴いてみると、 山下達郎の音楽は、いまでもちっとも乗り越えられていないと思う。この Disc1 の中でいちばん好きな曲は「PAPER DOLL」、いちばん優れた曲は「SPARKLE」だろうか。前から順に聴いていって、「LOVE SPACE」から「愛を描いて」あたりまでの流れは、本当にたまらない。それにしても、アルバム『FOR YOU』は充実しているなあ。Disc1 の選曲はだいたい妥当だと思うが、「RAINY WALK」が入っていなかったのだけは残念。「あまく危険な香り」は久しぶりに聴いたが、こんな若々しい声だったとは。この曲がラジオから流れてきた記憶が、ぼんやりと浮かび上がってきた。いやいや、本当に感傷的になってしまう。

OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜(初回限定盤)

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