大栗博司『重力とは何か』/上林暁『故郷の本箱』/『機動警察パトレイバー 2 THE MOVIE』

晴。
大栗博司『重力とは何か』読了。特に話題を重力に絞った、現代物理学の啓蒙書。数式は一切なし。第五章までは相対性理論量子力学の復習で、数式はなくとも、誤魔化しをせずに上手く書いてある。説明の仕方も紋切り型でなく、著者自身の言葉で語っているところがいい。第六章以降は、本書の目的である、「超弦理論」による重力の理解を取り扱って、なかなか面白い。内容はじつはとても高度なのだが、比喩でここまで書けるとは、さすがである。自分には途中まではだいたい知っている内容だったのだが、第七章と第八章にはノックアウトされました。「重力のホログラフィー原理」って…これ、すごいですね。これについては、もっともっと知りたくなった。数式レヴェルでだいたいのことがわかるようになりたいものだが、取り敢えず「標準模型」を理解するのが先ですね。本当にすごい世界だなあ。
 しかし、本書のような高度な内容の本がベストセラーになるなんて、これは大したことだと思う。自分も最近はちょっと物理の本を読んでいなかったのだが、また読んでみたくなりました。世界はまったく謎に満ちている。

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)

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上林暁『故郷の本箱』読了。随筆集。山本善行撰。上林暁はマイナーではあるが、今でも根強い愛読者がいる作家だ。本書を読んでいると、それは当然だと思う。やわらかく静謐で、どことなく古色を帯びた文体。本来なら、古本で読むのがぴったりの作家かも知れない。でも、そうだとすると、探本に億劫な自分のような者には読む機会がなかなかなさそうであるから、新刊で出してくれた出版社に感謝せねばならないだろう。滋養たっぷりの書物である。
故郷の本箱―上林曉傑作随筆集

故郷の本箱―上林曉傑作随筆集

シュヴァレーの『リー群論』がむずかしい… 自分のレヴェルを超えているかな。後回しにすべきか。

レンタルしてきたDVD『機動警察パトレイバー 2 THE MOVIE』を観る。押井守監督。一応観ておかねばならないということで、ようやく観ましたよ。オリジナルは1993年なのかな。近未来SFとしては、制作から二〇年が経ったわりには、さほど古びていないなと感じた。アニメ的な映像も、例えば同じ押井守監督の『イノセンス』と比べれば、若干古びた感じだが、充分見られるもの。ただ、押井守独特の世界観は、やはりオタク的で、自分もオタク的なところはあるけれど、押井の軍事オタク的なところなど、ちょっと勘弁して欲しいとも感じた。また、「日本の平和ボケを撃つ」みたいな世界観を語る部分が多くて、パトレイバーの活躍のような場面は刺身のツマだった。最後は予定調和。もちろん充分面白いアニメ映画だが、自分にとって傑作かどうかは、微妙なところ。まあ、正当な評価には、二〇年前の作品ということは、考慮されねばならないでしょうが。
EMOTION the Best 機動警察パトレイバー2 the Movie [DVD]

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