デュレンマット『失脚/巫女の死』/岩田規久男『景気ってなんだろう』

晴。急に寒くなってきた。ついに長袖の服に替える。
デュレンマット『失脚/巫女の死』読了。デュレンマットは、二十世紀スイスの作家。本書は短篇集で、(自分でもあまり上手い形容だとは思わないが)シリアスなトーンで喜劇を語る(あるいはその逆)というか。エンターテイメント性も充分あって、読んでいて面白い。もともとは劇作家として名を成した人だという。

失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選 (光文社古典新訳文庫)

失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選 (光文社古典新訳文庫)

岩田規久男『景気ってなんだろう』読了。高校生なら読めるだろうし、ひょっとすると中学生でも大丈夫かも知れない。景気に関する基礎知識が学べる。著者は信用できる経済学者という評価が高いが、いわゆる俗説が退けられていなくて、やはり基本的には俗説が正しい場合もあるのだなと思った。例えば、貿易黒字がよくて貿易赤字がよくないというのは、巨大な貿易赤字を抱えるアメリカが繁栄していることからも、よく俗説といわれるのだが、本書によれば、貿易赤字はやはり短期的には景気を悪化させる原因になるらしい*1。もっとも、長期的には必ずしもそうでないということだが。ただ、本書には書いていないが、国際貿易というのは、ゼロサム・ゲームではないのである。そこらあたりがむずかしい。
 なお、本書には、公共事業や減税が、今となっては、景気を好転させる手段としては優れているとは云えないことも、指摘・解説してある。いま自民党などは、政権を獲ったら公共事業をやりまくることを公言しているが、消費増税と相まって、日本の国力をどんどん削いでいくことだろう。どうもそうなりそうな気配であるけれど。
景気ってなんだろう (ちくまプリマー新書)

景気ってなんだろう (ちくまプリマー新書)

それにしても、この円高がずっと続いているというのは、絶対に異常だ。日本にとっては、迷惑千万な話である。そして、もう言い飽きた気がするくらいだが、やる気なしの政府や日銀に対し、どうして企業は怒りの声を発しないのだろう。日銀など、もう手は打ち尽くしてやることがないなどと言っているが、こういうデタラメを、どうしてまかり通らせておくのか。これはれっきとした「犯罪」であるのに。
 そして、あまりにも下らないので云うのに努力を要するが、「復興予算」を関係のないところに使っている大勢の奴ら、官僚なのか政治家なのか知らないが、あれほどシリアスな大災害が起きたのに、まだ省益云々なぞを優先させるのか。真面目に被災者のこと、引いては日本全体のことをどうして考えないのか。それで「復興増税」だとは、情けなくてガックリくる。復興予算は19兆円だか何だか知らないが、全部被災者に差し上げたらどうだね。そうすれば復興など朝飯前だろう。どうしてその金で、沖縄にトンネルなんか掘っているのかね?

*1:このエントリーを書いた後、検索してみると、ここの内容は保留している専門家もいた。やはりね。