ジーン・シャープ『独裁体制から民主主義へ』/宮田登『はじめての民俗学』

晴。
ジーン・シャープ『独裁体制から民主主義へ』読了。独裁体制を倒し、その後に民主主義体制を確立するための方法を研究した書。かなり一般的、抽象的な分析がなされているが、単なる思弁の書ではなく、現実をよく知った上で抽象化されたものである。本書の現実性は、実際に世界各地の独裁に対する抵抗運動の現場で、よく参照されていることからも明らかであろう。やはり、きちんとした理論の力の強さを思う。具体的な内容は、とにかく本書を読んで実際に接してみて欲しいと思うのだが(薄い本で、しかも文庫だからね)、非暴力主義の重要性を説いていることは記しておきたい。これは、無抵抗主義とはまったく関係がなく、独裁体制において一番強いのが暴力であるゆえ、それに暴力で対抗しても成功はほとんど不可能だからである。また、いかに独裁体制であろうが、その究極的な拠り所は結局、民衆の支持によるのであり、民衆がすべてそっぽを向いてしまえば、倒れるしかないということも確かである(実際に、そうして倒れた独裁体制の実例は、東欧の共産圏に存在した)。あとは、独裁体制の後釜が独裁体制にならないようにすることが大切で、そこでも非暴力主義の重要性が理解できよう。細かいことは、是非本書で。
 なお、本書の英語版は、著者の研究所のウェブサイト(参照)からダウンロードできる。

独裁体制から民主主義へ―権力に対抗するための教科書 (ちくま学芸文庫)

独裁体制から民主主義へ―権力に対抗するための教科書 (ちくま学芸文庫)

宮田登『はじめての民俗学』読了。大塚英志の先生だと思うと、いかにもという気はする。