曇。
青柳瑞穂『ささやかな日本発掘』読了。乾山や光琳を発見する話は面白かったが、全体として感心しなかった。どうも悪しきディレッタントの文章としか思えない。…ではあるのだが、反省することもある。著者はどうやら「繊細で美しい日本」というやつがわかっているようだが、これは著者の文章にあらわれているのだろうか、ということである。そうなら、わかっていないのは、自分の方だということになる。というのも、自分は前から、西洋のものだけでなく、日本のものも好きな積もりだったのだが、それが本当にわかっているのか、最近疑問に感じ始めたからだ。いや、以前はわかっていたのかも知れないが、趣味が変わってきて、わからなくなったのかも。ちょっと小林秀雄を久しぶりに再読し始めているのだが、そんな気がしているのである。例えば、アニメ顔の女の子と、「繊細で美しい日本」の間に、何か関連があるのだろうか、ということだ。関係があったならあったで、何だということになるかも知れないし。
- 作者: 青柳瑞穂
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1990/08/03
- メディア: 文庫
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それから、第三章の「予知の科学」であるが、フラクタルやカオスの中途半端な解説は不要である。一般読者にも専門家にも役に立たない。ましてや、「現状では、フラクラルやカオスの概念が現象のどこにどう適用できるかまだよくわかっていない」(p.220)と書いているのは、語るに落ちるというもので、著者の自己満足だけが透けて見える。
ただ、本書がまったく無意味かどうかは、読者によるだろう。理系の専門家が専門的に書く本を文庫で読める機会はあまりないので、かかる本のサンプルとして、読む意味があるかも知れない。もちろん、本書から有用な情報が引き出せるなら、それに越したことはないわけである。
- 作者: 井田喜明
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/06/01
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