R・A・ニコルソン『イスラムの神秘主義』/朝吹真理子『きことわ』

晴。
イオンとJTB
R・A・ニコルソン『イスラム神秘主義』読了。訳者解説にもあるが、スーフィズムと仏教(とりわけ禅や密教)の近さには驚かされた。直接の影響云々よりも、イスラム誕生の一千年前に成立した仏教の残り香が、スーフィズムに入ったのだろう。もちろん、いかなる宗教も、突き詰めれば究極的には似たような境地に至るということも、あるわけではあろう。ただ、スーフィズムは神と合一し、世俗的なイスラム教の教えに違うところまで到達しうるというのは、仏教とはちがうし、個人的には、唯一者を立てない仏教の方が、自然であるように感じる。(一言云っておけば、著者の仏教把握はどうなのだろう。「涅槃」の理解など、どうも納得しがたい。だいたい、仏教で「涅槃」というのは、さほど重要ではないと思うのだが。)本書では、スーフィズムイスラム教が必ずしも一致しないことを、どうも強調しているところがある。また、著者が書物からだけでなく、神秘主義を内的に把握しているのかどうかもわからない。しかし、それらを考慮に入れても、スーフィズムを知る上で本書が得がたい本であることは、否定することはできない。自分の素人判断ではあるが、コンパクトでよみやすく、優れた書物であると云うことができると思う。

イスラムの神秘主義―スーフィズム入門 (平凡社ライブラリー)

イスラムの神秘主義―スーフィズム入門 (平凡社ライブラリー)

朝吹真理子『きことわ』読了。文章は端正。技術もしっかりしている。特に何も起きない小説というのは、今の流行りかな。文学っぽい仕上りだ。
しかし、アマゾンのレビューはみんな貶しすぎ。ちょっとひどすぎるだろう…
きことわ

きことわ