ジュリアードSQの弾くモーツァルト、弦楽四重奏曲第十四番K.387を聴く。きっと悪かろうはずがないと思って聴いてみたが、やはり素晴らしい。予想通り、テンポはやや速めで、メリハリの利いた演奏だ。アンサンブルの完璧は云うまでもない。この曲は、数ある弦楽四重奏曲の中でも、ベートーヴェンのラズモフスキーと並んで自分がもっとも好きなもののひとつであり、また好きな演奏もたくさんあるが、これも特別の地位を占めそうだ。とりわけ、後の二つの楽章がいい。この曲の終楽章を聴いていると、いつもモーツァルト最後の交響曲、いわゆる「ジュピター交響曲」の終楽章を思い出してしまうのであるが、この演奏で聴くと、対位法的な見事な複雑さをもった楽章だということがはっきりする。残念なのはもっと長いこと聴いていたくなることで、展開部は「もっと続けてくれ」と思うほどだ。小林秀雄ではないが、ここからモーツァルトの「意識的な」作曲が始まるという、画期的な曲であり、弦楽四重奏曲というジャンルの代表的な名曲のひとつになっている。
ついでに、ジョン・グラハムを加えた、弦楽五重奏曲第四番も聴いてみる。こちらもいい。というか、こちらの弦楽五重奏曲の演奏は、決定盤に近いのではないか。
- アーティスト: W. A. MOZART
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- 発売日: 2011/08/26
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