リヒテルの未発表音源を聴く(CD2枚組)。殆どが1958年(リヒテル43歳)のモスクワでのライヴから、ばらばらに収録されている。但し、ブラームスのピアノ五重奏曲はスタジオ録音らしい。これ、凄い演奏です。リヒテルも圧倒的だが、共演のボロディン四重奏団が鬼気迫る演奏を繰り広げている。特に第三楽章。最初の弦のピチカートからして雰囲気がある。たぶん、この曲の自分が聴いた中での最高の演奏だ。
リヒテルは、ショパンもシューマンも言うことなし。この後でCD1のベートーヴェン(悲愴ソナタ)を聴くと、ロマンティークとは何だろうと思う。ベートーヴェンから少しずつ、音楽の中に、何か過剰なものが侵入してきている。それは、シューマンを聴くとよくわかる。まだベートーヴェンの段階では、「音符の数が少ない」のだ。シューマンになると、和声構造など、曲の作りがどんどん複雑になっていく。
最後はリストの「巡礼の年」(抜粋)。それにしても、リヒテルの様式感のすばらしいことといったら! 多様なレパートリーをじつに的確に演奏している。ベートーヴェンとショパンが共に弾けるピアニストは、結局リヒテルしかいない(ポリーニはベートーヴェンがダメ)。
なお、すべてモノラル録音だが、ノイズ・リダクションはほぼ完璧で、アベッグ変奏曲以外は充分聴ける音質だ。
- アーティスト: Beethoven / Richeter
- 出版社/メーカー: Andromeda
- 発売日: 2012/01/01
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
収録曲を書いておく。
CD1 ベートーヴェン:「悲愴」ソナタ。リスト:「巡礼の年」から8曲抜粋。
CD2 ブラームス:ピアノ五重奏曲。ショパン:2つの練習曲。シューマン:トッカータ、アベッグ変奏曲。