ヘイズリット『時代の精神』

休日。晴。
W・ヘイズリット『時代の精神』読了。著者名は普通「ハズリット」と日本語表記されるが、本書の読み方が原音に近いそうだ。十八世紀後半から十九世紀前半のイギリスにおける、著者と同時代の人物らに対しての人物批評である。文章がなかなか厄介で、翻訳のせいというよりは、明らかにもともとそうなのだ。凝った比喩や、(特にシェイクスピアからの)無断引用が多く、すらすらと読めるようなものではないが、一時代の散文表現として、それはそのまま賛辞にもなる。驚くのはその辛辣さだ。自分の愛する人物に対しても、欠点は容赦なく暴かずにはすまない。しかし、その評価の確かさは賞賛されるところで、同時代的な批評であるにもかかわらず、まるで後世から判断しているかのようである。彼の評価が、そのまま受け入れられたとも云えるだろう。といって、愛がないわけではない。親友であるチャールズ・ラムなどは、ほとんど絶賛であるし、そちらでも公平であるのだ。

時代の精神―近代イギリス超人物批評 (講談社学術文庫 (1213))

時代の精神―近代イギリス超人物批評 (講談社学術文庫 (1213))