小林哲夫『高校紛争1969-1970』

晴。

林哲夫『高校紛争1969-1970』読了。学生運動の季節に、高校生たちはどう対応していたかというのが本書の内容である。高校生たちもまた、イデオロギーを注入されて「戦った」わけだった。時代はちょうど自分の生まれた頃で、この時代を知るために、本書はたいへんいい読書になった。まあ、バブル世代の自分たちにとっては、あまりにも時代が違うことは痛感させられたけれども。
 当時の高校生たちに対してもいろいろ幼稚な感想が浮かび上がってきたが、ここに記すほどのものではない。ただ自分は、どんな状況に対しても、いかなる保留もなしに適用できる「正義」などないと、そう考えるタイプの人間なのだなとは思った。ただしそれは、「真実」がないと云っているわけではない。絶対不変ではなくても、やはり「真実」は存在せねばならない。
 例えば、パレスチナ問題について云えば、イスラエルの「正義」もアラブの「正義」も共にあってお互いを否定しあっているわけであるが、そもそもの発端は、普通に暮していたパレスチナ人(アラブ人)たちのところに、ユダヤ人たちが勝手に入り込んできたわけであり、それに関してパレスチナ人たちには何の落ち度もないのである。自分の言う「真実」というのは、おおよそこのようなものだと云えると思う。このような「真実」は時にまったく無力ではあるが、しかし簡単に否定できることではないのだ。
 さて、では高校紛争の「真実」とは何か。残念ながら、本書を読んでもそれは判然とはしなかった。高校紛争は、何かポジティヴに残るものを生み出したのだろうか? それとも歴史の徒花だったのか?

高校紛争 1969-1970 - 「闘争」の歴史と証言 (中公新書)

高校紛争 1969-1970 - 「闘争」の歴史と証言 (中公新書)