先日、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタで第四番が好きと書いたのだが、考えてみると、他にも第四番で好きな曲が少なくないのにふと気づいた。ベートーヴェンでは弦楽四重奏曲は彼らしい四番は外せないし、交響曲は四番をいちばんよく聴く。ピアノ協奏曲は四番が最高傑作。モーツァルトやハイドンでは番号が若すぎて思い当たらないが、バッハはフランス組曲の四番を偏愛。ロマン派ではショパンのポロネーズというと、引き締まった四番。即興曲も四番。シューマンの交響曲は三番が偏愛だが、四番も好き。ブラームスは交響曲は四番しか聴かない。マーラーはいちばん好きなのは六番(いや九番か)だが、よく聴くのは四番、という具合である。
他の番号では、こんなことはないなあ。グールドが、大作曲家の交響曲第九番ばかりで演奏会をやるとか何とか書いていたのを、ちょっと思い出した。ベートーヴェン、シューベルト、ドヴォルザーク、ブルックナー、マーラー等々、うーん、一曲だけでも疲れそうな、重い曲ばかりだな。ショスタコーヴィチはわりと軽いし、最後の交響曲ではないけれど。
よく考えてみると、第一番というのはどの作曲家も特別なものなので、俄然名曲が多くなっているのは確かだ。これはほとんどの作曲家の、それも各ジャンルでそうなので、いちいち挙げられない。個人的に特に好きなのだけ書いておけば、バッハのピアノ協奏曲、フランス組曲。モーツァルトのピアノ・ソナタ。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ。交響曲。シューマンのピアノ・ソナタ、ヴァイオリン・ソナタ。ショパンのバラード、スケルツォ。ブラームスのピアノ協奏曲、弦楽四重奏曲、ピアノ三重奏曲、ピアノ四重奏曲、ヴァイオリン・ソナタ。スクリャービンのピアノ・ソナタ。どれも名曲ばかりだ。でも、第四番の偏愛性(?)とはやはり比較できないのである。