鈴木大拙コレクション『禅に生きる』/鎌田東二、玄侑宗久『原子力と宗教』

晴。
鈴木大拙コレクション『禅に生きる』読了。大拙の社会批評を集めたもので、このような文章が纏められるとは驚きだ。例えば大拙が戦争に対し、どのように考え、どう対処したかが窺われる。一読してみて、やはりこういうことについては、世界的禅者であっても独創的な意見を吐くというのはむずかしいなと思った。大拙の仏教的著作を読んでいない人には、本書から大拙に入るのは誤解の元になるかも知れない。そちらの著作に親しんでおれば、本書もまた一興だと思う。十五年戦争時に時局に便乗して無責任な発言を繰り返し、戦争が終ればいけしゃあしゃあと立場を変えて民主主義を語ってみせた禅坊主たちに対する、火のような批判もある。一方、冷戦下、核戦争で人類が滅びるなら、自業自得という文章もある。

禅に生きる―鈴木大拙コレクション (ちくま学芸文庫)

禅に生きる―鈴木大拙コレクション (ちくま学芸文庫)

鎌田東二玄侑宗久の対談集『原子力と宗教』読了。玄侑さんの本なので。鎌田氏は、文明論的・歴史的センスがあまりよくないように感じる。間違っていたら御免なさい。それにしても、仮設住宅が一棟600万円というのは、高すぎるだろう。業者と行政の間に癒着がないと思う方がおかしい。また、東電に賠償(東電は「補償」と言っているそうだ)を払わせるには、わざわざ見積もりを出して請求しないといけないそうだ。精神的な苦痛などは、理由にならないというのか。