ジャクソン・ポロック展/室生犀星『或る少女の死まで』

晴。

名古屋の愛知県美術館へ、ジャクソン・ポロック展を観に出かける。生誕100年とのことで、最近は不況のために東海地方では碌な美術展がなかったから、久しぶりの大物で期待した。実際のところ、とても面白かった。ポロックというと、ポーリングという手法を案出したモダン・アーチストというイメージだが、初期の幻想的な画風もとてもいい。ただの前衛芸術家ではないことがよくわかる。岡本太郎によく似た絵も結構あって、時代の病を引き受けるとはこういうことだなと思った。もちろん岡本と似て、ピカソに多大な影響を受けていることは明らかだ。
 そして、絶頂期の、ポーリングを画面一杯(オールオーヴァー)に使った「インディアンレッドの地の壁画(Mural on Indian Red Ground)」には圧倒される。この時期のものすべてがそうだが、ポーリングはすべて偶然にまかせてなされているのではない。いわば、ブーレーズではないが、「管理された偶然性」というものである。ものによっては、ポーリングの結果を後で手を加えて修正している作品も少なくない。
 最晩年の衰えは痛ましい。あきらかに、矛盾と対決する力を失っている。そして、自動車事故により44歳で亡くなる。
 これを観てから所蔵品展も覗いてみたが、たまたま近代の日本画が展示してあったのだけれども、近代日本画の力のなさは何だろうと思った。見られるのは鏑木清方くらいだった。それを思うと、近現代の西洋美術のコレクションの方が見られる。なるほど、ポロックもこういう中から生まれてきたのだということが、よくわかった。

 名古屋駅前の大名古屋ビルヂング地下「ボンベイ」にて、インドカレー(1000円)を食う。ここ、自分が高校生のころ既にあったのだが、大名古屋ビルヂングが取り壊されるので、そのうちなくなる。名古屋へ行くとこれまでもよく寄ったのだった。
 駅前のジュンク堂。数学の本をいろいろ買う。横浜図書ってよく知らない出版社なのだが、何だか値段が安い。とりあえず、宮島静雄『関数解析』(2950円)を買う。あと、日本評論社の数学の復刊本をいくつか。岩波の『統計物理学』の復刊も。欲しい本はいくらでもあるが、大概にしておく。また名古屋へ来よう。近鉄パッセタワーレコードには寄れなかった。

室生犀星或る少女の死まで 他』読了。自伝的小品三篇。ナイーヴな小説と云えばそうであり、犀星は何となく美しい詩を書いた人だと思っていたが、これを読んでみると、決してきれいごとだけが書いてあるわけではない。やはりこれは文学だ。

或る少女の死まで 他二篇 (岩波文庫)

或る少女の死まで 他二篇 (岩波文庫)