バーバラ・タックマン『決定的瞬間』/山下祐介『限界集落の真実』

休日。晴。
カルコス。

バーバラ・W・タックマン『決定的瞬間』読了。第一次世界大戦におけるアメリカの参戦が、イギリスによるドイツの暗号電報(ツィメルマン電報)の解読によって、決定的になったことを明かした本である。この電報の内容は、ドイツがメキシコと日本をアメリカに敵対させるように仕向けようとするもので、アメリカの参戦に消極的だったウィルソン大統領を始め、大陸に無関心でありがちだったアメリカの世論を、決定的に反ドイツに向かわせることになった。(ドイツ側は間抜けなことに、この電報が公になったあとも、自分たちの「優秀な」暗号が解読されていたなどとはつゆも考えが及ばず、同じ暗号を使いつづけているのである。そのてんやわんやまで逐一解読され、イギリスの暗号解読室は笑いが止まらなかった。もっとも、日本も偉そうなことは云えないので、第二次世界大戦前に、これもイギリスによって暗号を解読されている。真珠湾奇襲も、アメリカ側は事前に察知していたというのは、有名な話であろう。)
 ただ、内容はそれだけに尽きるものではない。第一次世界大戦の初期から中期の経過が、裏側からよくわかるものになっている。国家におけるインテリジェンス(諜報活動)の重要性が、これを読むとよく納得できる。「情報」という、摩訶不思議なもの。それが、何百万、何千万といった人々の命に直結しているのだ。

決定的瞬間―暗号が世界を変えた (ちくま学芸文庫)

決定的瞬間―暗号が世界を変えた (ちくま学芸文庫)

山下祐介『限界集落の真実』読了。限界集落とは、集落の人口の半数以上が六十五歳以上の高齢者となり、社会的共同生活の維持が困難になっている集落を指す。著者は、この言葉がひとり歩きして、過疎の村を実際以上にネガティヴに捉える風潮があると指摘する。実際、消滅した集落は百を超えるが、ダムによる水没や集団移転などによるものがほとんどで、いわゆる少子高齢化によって消滅した村は、まだひとつもないらしい。
 では、問題は捏造されたものなのか。いや、それほど簡単には云えない。限界集落においては、まだ現段階では「昭和一桁生まれ」の世代が何とか集落を維持しているが、この世代が平均寿命に達する2010年代が、問題になるだろうという。でも、2010年代って、今ではないですか。
 著者は何とかポジティヴに語ろうとするのだが、これはという特効薬はなさそうだ。限界集落に住む年寄りの子供たちは、たいていは近くの多少大きな町に住んでいることが多く、彼らの帰郷を待つというのが、一番の解決策らしい。それはまあ、そうでしょうね。
 ただ、本書にも出てくるが、国とかの支援に頼るのは、最終的にうまくいかないのがほとんどらしい。国の役人は実情を知らず、無意味な箱モノをこしらえて膨大な維持費だけが残ったりとか、また何より、住民が自分たちの問題として捉えない。結局、自分たちのやる気に賭けるしかないのである。それはそうだろうな。
 でも、本書が無駄だとは思わない。データや調査結果などは貴重だし、こういう問題を新書の俎上に載せただけでも、成功ではないだろうか。

限界集落の真実―過疎の村は消えるか? (ちくま新書)

限界集落の真実―過疎の村は消えるか? (ちくま新書)


写真の整理。学生時代に撮ったものも整理して、久しぶりに見て懐しかった。当然いまのカメラで撮ったものと比べることになったけれども、改めて最近のデジカメの実力には驚かされる。
MOTHER3。改造カリブーは倒したが、そのあと、薄々予想はしていたけれども、悲しい事実が…