稲葉陽二『ソーシャル・キャピタル入門』/加藤久和『世代間格差』

雨のち曇。
稲葉陽二『ソーシャル・キャピタル入門』読了。ソーシャル・キャピタルとは、日本語では「社会関係資本」と訳され、人と人との繋がりを資本と見做したもの。著者は、「心の外部性を伴った信頼・規範・ネットワーク」(p.27)と定義している。「外部性」というのは、経済学でいう「ある取引が当事者以外の第三者に及ぼす影響」(p.12)のこと。

ソーシャル・キャピタル入門 - 孤立から絆へ (中公新書)

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加藤久和『世代間格差』読了。年金にせよ何にせよ、若い世代の負担が重くなるということだな。まあ常識的に分っていたことだが、実証研究ではっきりと数値化されているということである。結婚観の変化と、少子高齢化が主な原因というのも、実感と合っている。それにしても、生涯純受益を計算すると、60歳以上では約4000万円のプラスなのに対し、将来世代は約8300万円のマイナス(2008年時点)というのは、あまりにも差が大きすぎはしないか。並大抵の格差ではない。
世代間格差: 人口減少社会を問いなおす (ちくま新書)

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シューマンピアノ五重奏曲を聴く。この曲は個人的に思い入れのあるもので、室内楽曲が好きになるきっかけとなった、いくつかの曲のうちのひとつなのだった。ロマン派の室内楽は名曲が多いが、その中でもこの曲は、第一に指を屈するべきもののひとつだと思う。この演奏は最晩年のリヒテルボロディン四重奏団の共演で、自分のいちばん気に入っているものだ。第一楽章のテンポが多少遅い以外は、ほぼ満足できる仕上りになっている。とりわけ、第三楽章及び終楽章の盛り上がりが素晴らしい。曲が終ったところで、つい拍手をしたくなるくらいだ。