ゲルハルト・オピッツが弾く日本のピアノ曲

ゲルハルト・オピッツが日本のピアノ音楽を録音したというので、聴いてみた。
 メインは諸井三郎のピアノソナタ第二番である。30分ほどの大曲であり、聴き応えは充分だ。ライナーノートでオピッツが述べているとおり、ヒンデミットに影響を受けているのだろう、モダンといえばモダンである。録音されるのは初めてだそうだが、ピアニストの力量が必要とされるように思われるし、何より作曲されたのが太平洋戦争を控えた頃で、全体的に陰鬱な印象を与えられることを考えると、それも已むを得なかったのかも知れない。オピッツの演奏は立派なもので、彼の手によって録音されたのは、この曲の幸運だった。
 他の曲では、池辺晋一郎の「大地は蒼い一個のオレンジのような…」が面白かった。池辺は初めて聴いたが、個性のある曲を書くではないか。武満徹の「雨の樹 素描」は既に録音で何度も聴いた有名曲であるが、さすがに武満徹で、いつ聴いても新鮮だ。藤家溪子の「水辺の組曲」も、ドビュッシー風の佳曲。とにかく音になって聞けないと、何も始まらないから。