原勝郎『南海一見』/渡辺京二『黒船前夜』

曇のち雨。
原勝郎『南海一見』読了。大正二年から三年にかけての、原勝郎の東南アジア旅行記。アマゾンで見かけるまでは、このような本があるとは知らなかった。マーケットプレイスで安かったので購入。名文家で知られる著者だが、本書の文章は雅ではあるけれども意外に平明であり、観察もリアリズムだ。

南海一見 (1979年) (中公文庫)

南海一見 (1979年) (中公文庫)

図書館から借りてきてもらった、渡辺京二『黒船前夜』読了。明治維新からほぼ百年前の話。副題「ロシア・アイヌ・日本の三国志」が、本書の内容を要約している。シベリアから南下し、日本と貿易を成したいロシアと日本との関係に、アイヌが絡む。松前藩アイヌの関係などは初めて知ったことばかりだった。ロシアに対応する幕府の役人らは、愚か者もいることはいるが、ユーモアを解すなどなかなか悪くない人物が多く、好奇心旺盛で人懐っこい民衆の姿と合せて、深く考えさせるものがある。
 なお、著者らしく、「幕府は何でも知っていた」とか「鎖国はなかった」風の最近の史学の論調に釘を刺すなど、行き過ぎた通説には厳しい。しかし、と云って無味乾燥な記述というわけではなく、歴史書を読む楽しみに満ちた本になっていると思う。

黒船前夜 ~ロシア・アイヌ・日本の三国志

黒船前夜 ~ロシア・アイヌ・日本の三国志