晴。
アーサー・I・ミラー『137』読了。副題「物理学者パウリの錬金術・数秘術・ユング心理学をめぐる生涯」。題名の「137」というのは、微細構造定数の逆数である。二十世紀に綺羅星のようにたくさん居た超一流の物理学者の中でも、パウリはとりわけシャープであり、批判力に長けた存在だったが、じつは飲酒、漁色に耽るなど、精神面に深い暗黒をもっていたため、心理学者ユングの助けを必要とするようになる。そしてその過程で、パウリが多くのものをユングから得ただけでなく、ユングもパウリから多くを受け取ったのだった。二人の共著『自然現象と心の構造』という、どこか謎めいた本は、その成果のひとつであった。パウリは晩年になると、物理学と心理学の相補性を確信し、密かにその統合への道を探るようになっていく。ユングというと、今では真面目に取る人は少ないと思うが、本書は慎重に書かれており、ステロタイプなユング=オカルトなる理解を退け、同時に単純なユング礼賛にも陥っていない。パウリにもユングにも興味のある人には、面白い内容になっていると思う。
137 物理学者パウリの錬金術・数秘術・ユング心理学をめぐる生涯
- 作者: アーサー・I・ミラー,阪本芳久
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2010/12/14
- メディア: 単行本
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- 作者: カール・グスタフ・ユング,W.パウリ,河合隼雄
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