中野剛志『TPP亡国論』/内田樹、中沢新一、平川克美『大津波と原発』/ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」

日曜日。雨。台風。

中野剛志『TPP亡国論』読了。TPPが徹頭徹尾アメリカの利益を貫徹するためのものであり、参加は論外というのはその通りだと思う。しかし、本書は経済学的な知見において、素人には納得できない点も少なくない。例えば、安い農産物の輸入によってデフレが促進されるというが、まったくそういうことがないとは言わないが、これは「デフレにはほとんど影響がない」というべきではないのか。これは本書のロジックの重要な部分のひとつであり、もし本当に本書のとおりなら、もっと説得的に論証せねばならないだろう。また、デフレの脱却には公共投資をガンガンやって、内需を拡大しなければならないというのも、このような粗雑な論理では納得できない。著者はどうして日本がデフレに陥っているか、きちんと判っていないように見えてしまう。
 もちろんこれらは素人の感想であり、見当違いの可能性もある。しかし、本書の論証にかなり強引な感じを与えられるのはどうも仕方がない。ツイッターその他で「緻密な論理」などと絶賛されているのとは、ちょっと異なった印象を受けたというのが、正直なところである。

TPP亡国論 (集英社新書)

TPP亡国論 (集英社新書)

内田樹中沢新一平川克美の鼎談『大津波原発』読了。四月五日のUstream中継の書籍化である。中継は見逃していたので、書籍化は嬉しかった。まあ内田樹は自分にはどうでもいいので、主に中沢新一の発言に注目して読んだ。その中身は「すばる」の論文(参照)とそれほど違いはなかったが、日本の中心が西に移るというのはなるほどと思った。それから、中沢は「誰でも思いつくだろうけど」と云って、放射性物質に汚染された土地を高く借りて、そこで太陽光発電をするなどはどうかという意味のことを述べているが、自分には初耳というか、誰かそういうことを云ったかと思った。それから話題を呼んだ「緑の党」発言。どれほど本気かわからないが、期待される。
大津波と原発

大津波と原発


ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」の再放送を録画したものを観た。話に聞いていた通り、NHKにしてはよく踏み込んだ内容だった。福島第一原発から30キロ圏に入っていないのに、高濃度の放射能汚染地区があったのを見つけている。数人の有志の活動によって明るみに出た事実なのだが、呆れたことに、文部科学省もデータをもっていたのに、その場所を明記せずにインターネットで公表していたのだった。住民がわからなくて、何のための情報か。大体、汚染地図にしたところで、政府が指示して数十人、数百人単位の観測者によって迅速に測定し、直ちに公表されるべきものだろう。これでは政府不信がおこるのは当り前である。それにしても、放射能汚染を受け、何年何十年と農業をやれなくなった人たち、餓死した3万羽の鶏の生産者、すべての馬を失った競走馬の生産者、ペットを見捨ててきた人たち、彼らの映像を実見するのはつらかった。こういう人たちが他にも大勢いるのだ。そして放出された放射性物質は、大地を何十年も汚染し続けるのだ。これは取り返しがつかない。

ツイッターで見かけた。

電気がないと日本の景気がどうこう言ってる人は、この国がなぜ20年間経済成長していないのか知らないのだろうか?利権に絡まれイノベーションも出来ず、国際競争力を失ってるからだ。つまり東京電力のような国内の独占企業が日本の経済成長の足を引っ張っているのだ。東電の破綻は経済成長に必要。

真面目な人だというのは分かるから、頼むから勉強してくれ。