山内進『北の十字軍』/村上春樹『意味がなければスイングはない』

晴。
山内進『北の十字軍』読了。本格的な歴史書で、とても面白かった。十二世紀以降、スラブ地方へ向けて、キリスト教への侵略的改宗のために、いわゆる「北の十字軍」が行われていたということは、恥ずかしながら本書で初めて知った。これは中東への「防衛的な」十字軍とは、その性格を異にしていたのであって、武力による改宗を目指したものである。中心となったのはドイツ騎士修道会であり、これは名は「修道会」であるが実態は国家であって、それも侵略的改宗のために特化した国家であった。やっているのは胸が悪くなるような血腥いことで、「神」の名のもとに、非道な侵略行為が平然となされ続けたのである。定期的な殺戮・略奪行為が常習化し、「軍旅 reysa」と呼ばれたことなど、破廉恥としか言いようがない。キリスト教の血腥さがよく出ていて、うんざりさせられた。

村上春樹意味がなければスイングはない』読了。本書が文庫化されたときに立ち読みして、なかなか惹かれたのだが、何となく買わずに済ましてしまったのが気になっていたので、「ブ」で見つけたときは迷わず買った。これがいい本である証拠は、読んでいて猛烈に音楽が聴きたくなってきたことである。優れた音楽評論の印は、このように音楽が聴きたくなってくるかどうかだと、自分は思っている。しかし、自分できちんと読めたと思うのはクラシック音楽(とブライアン・ウィルソン)の部分だけで、ジャズは素養がないのだが、そういうところも、筆の力だろう、大変おもしろく読めたのだった。結局、クリフォード・カーゾンのCDをネット通販で買ってしまったしね。シューベルトソナタニ長調D.850はまだ聴いたことがないので、楽しみ。ジャズも、You Tube かなんかでちょっと聴いてみよう。
意味がなければスイングはない (文春文庫)

意味がなければスイングはない (文春文庫)