コルモゴロフ『確率論の基礎概念』/佐藤泰志『海炭市叙景』/新海誠監督『雲のむこう、約束の場所』

曇のち雨。
プール。アピタ
A・N・コルモゴロフ『確率論の基礎概念』にざっと目を通す。自分のレヴェルを超えているので、解説がありがたい。でも、じっくりやったら面白そう。

確率論の基礎概念 (ちくま学芸文庫)

確率論の基礎概念 (ちくま学芸文庫)

佐藤泰志海炭市叙景』読了。「海炭市」とは著者の故郷の函館市のことで、本書は、その地を舞台とする連作短編集であり、著者の絶筆でもある。とげとげしくも痛ましい短編が並んでおり、中には暖かい感情の見えるものもあるとはいえ、また文学としては優れているのかも知れないが、痛々しい。いずれにせよ、自分には大変な放射能被爆した読書であった。しかし、最後の短編、何だか村上春樹の出来損ないのような空疎な一篇は、著者としては何のつもりだったのだろうか。とにかく、簡単に「いい小説です」とは云えないような作品集だと思う。
海炭市叙景 (小学館文庫)

海炭市叙景 (小学館文庫)


新海誠監督のアニメ『雲のむこう、約束の場所』のDVDを観る。前作の「ほしのこえ」同様、まったくの「セカイ系」だな。ストーリーもアニメ顔も自分には甘すぎて恥かしいくらいだが、まあ胸キュンで青春するのもいいでしょう。最近、押井守監督の「イノセンス」を観たばかりなので、SF的な造り込みは素人同然に感じたが、素人っぽいところが却っていいという人もいるかも知れない。しかし、例の「塔」だけれども、ああいう超高度の建造物は、赤道上でないと造れない筈ですよ。女の子の夢が世界を支えている、というのも、何ですかそれは。それから、量子力学的並行世界というのに則った設定は、ちょっと練り上げが足りないのではないか。東浩紀の『クォンタム・ファミリーズ』は本作へのオマージュでもあると思うが、こちらはもっと緻密にやっている。
※追記 後でアマゾンのレヴューを見てみたのだが、女性の辛辣な感想に目が留った。ヒロインの女の子が男性の願望的空想の所産で、リアリティがないというのである。これはその通りだろう。自分も、あれは単なる「お人形さん」だと思う。ギャルゲーというのはやったことがないが、あれもそんな感じなのではないかと類推される。