仲正昌樹『教養主義復権論』/石垣りん詩集/安田雪『「つながり」を突き止めろ』

晴。
プール。アピタ
仲正昌樹教養主義復権論』読了。著者はとても頭のいい人だが、ポジティヴな影響は与えにくい人だという気がする。結局、きちんと勉強しなさい、ということになるからだ。でも、それが一番の処方箋なのかも知れない。
 しかし思うのだが、一市民としては、いかにして、どこまで学ぶのか、というのが問題だ。一市民が、例えば著者のレヴェルまで政治思想に通暁するというのは、まず不可能だから。

教養主義復権論―本屋さんの学校2

教養主義復権論―本屋さんの学校2

石垣りん詩集』読了。読み始めは「声高でつまらん詩だな」と思ったのだが、そのうちその苛烈さに説得されてしまった。自分の好むような詩人ではないにせよ。でも、こんな詩にはハッとさせられた。ナイーヴだとお笑い下さい。「おみやげ」という詩です。

近年
旅からの
あんな良い土産はなかった。
さびしく
美しく
光るひとつの言葉


地球は青かった


降りて来た宇宙飛行士は
たちまち群衆の中にまぎれ
広場の人は手に手に
もらったばかりの言葉製望遠鏡をにぎりしめていた。


――見えるかい?
――うん
  見えるような気がする
心もとない足場だった。


たしかに在るものを
たしかに見つけた
たしかな言葉。


それがあまりにも遥かで
幻のよう。


地球は青かった

あまり石垣りんっぽくないのですけれど。

石垣りん詩集 (ハルキ文庫)

石垣りん詩集 (ハルキ文庫)

安田雪『「つながり」を突き止めろ』読了。ネットワーク・サイエンス(という語はまだ定着していないかも知れないが)の入門書。恐らくこれは現在の知の最先端の一つであり、そういうことに興味のある人は、読まれるといいと思う。しかし、ビジネスの効率を上げるために、会社内の仕事上の人間関係を把握する手段として、電子メールのサーバーの解析を行なうなどということを、一体してしまっていいものだろうか。著者も云うとおり、ネットワーク研究には、倫理的に(また法的にも)解決すべき問題がいろいろあるのであって、このようなことが等閑にされないことが望まれるだろう。例えば将来、自分のすべての人間関係がウェブ上でかんたんに見られるような事態が可能になれば、その事実に愕然とせざるを得ないような人が出てくるのは必至である。自分は、そんな世界はきっぱり御免被りたい。
「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書)

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