家族で日帰り京都観光

東寺・五重塔

父が京都へ行きたがっているし、母と自分も、いま京都国立博物館で開催されている「長谷川等伯展」が見たかったので、GWの休日で混雑しているのは承知の上、思い切って行こうということになる。しかし、何も考えずに行けば「120分待ち」などということになるので、考えたのは、ウェブで混み具合を見ていると、閉館時間近くは殆ど混んでいない、ということであった。そしてちょうど今日から、閉館時間が遅くなる、これで行こう、と考察したわけである。
 そうすれば、朝も慌てなくていい。9時半に車で家を出て、新幹線の岐阜羽島駅へ。駐車場に車を置いて、うまく10:35発の指定席が取れた。乗ってしまえば、京都まで40分である。京都着。学生時代は京都だったが、駅ビルは一新されて、いつもながら圧倒される。11時過ぎ、地下のポルタで早めの昼食。飲食店街もまだ混んでいなくて、これはおすすめのやり方だ。昼時は大変な混雑なので。
 タクシーで東寺へ。京都は狭いので、人数がいればタクシーが安い。それにしても、いい天気だ。雨上がりで、大気がひんやりしているのもちょうどいい。
 東寺は、なんと今日から、五重塔の内部の特別公開が始まっていた。絵葉書の風景のような五重塔を一応カメラに収めて、中へ。心柱を大日如来に見立てて、東西南北四方に如来仏がある。これは珍しい経験だった。講堂の立体マンダラも、すべて国宝の十二神将がすばらしい。ただ、宝物館は「風信帖」くらいで、意外にいいものが無かった。前はもっとよいものがあったような気がしていたが、記憶違いだったか。しかし、ここは名品をたくさん持っているはずだが。
 タクシーで六波羅蜜寺へ。運転手も言っていたが、思ったより観光客が少ない。一日くらいから増えてくるだろうとのことであるが、どうせ大変な混雑だろうと、出足が鈍いのか。川端もすいすい通れる。いずれにせよ、ありがたい。六波羅蜜寺平清盛像と、空也上人像はいいですよ。有名でもあるし。
 ここから、六道珍皇寺へ歩く。小野篁が冥界へ通ったという井戸を、父が見たいというので。ここも今日から特別公開で、関西人お笑い解説付きで寺宝を見せてくれる。井戸も本来は見られなかったらしいが、今日は写真撮影すら自由というのでラッキー。そしてこの前の道が、「六道の辻」だそうだ。
 清水道へ出て、ここいらで休憩しようということで、「うちごはんcafe清水道」という店に入る。新しい洒落た店で、本来はごはんの店だが、cafeもどうぞという。ほっこりロールという、ほうじ茶を入れたロールケーキと珈琲のセットで800円。ちょっと高いが、ケーキも珈琲も満足。おかわりもできる。珈琲は繊細な味なので、砂糖もミルクも入れないほうがいい。旅行の途中に入るにはとてもいい店だった。ちなみに、店主は女優のようにきれいなひとだったです。
 清水道から、これも父のリクエストで、定番の清水寺へ。小学校の修学旅行以来なんだと。当り前だが、もうとても混んでいました。外国人多数。ここでも中国・韓国人が目立つ。もっと来てくれたらいいと思う。
 4時頃、京都国立博物館へ。混み具合はどうかと思ったが、20分待ちということで、これは充分許容範囲。ネットから印刷した割引券を見せて、大人一人1300円。先に言っておけば、これだけ出す価値はあった。量もあったし、質もすばらしかった。
 長谷川等伯というのは、大変に画風の広い人だと思う。日本画のどんなジャンルでも、すぐにそこそこ描けてしまったのではないか。若い頃から上手い。「善女龍王像」は少女のように愛らしく、小品ながら初期の佳品だと思う。達磨像なども描けてしまう。意外に面白かったのは肖像画で、「千利休像」はいうまでもない傑作だし、「玉甫紹蒴像」も気に入った。肖像画は丁寧に観てみるとよいと思う。しかし、金碧画はつまらない。国宝の「松に秋草図屏風」は状態がかなり悪く、智積院で観たときはもっと感動したと思うが、今回はダメだった。あれは模写だったのだろうか。模写に感動するということは確かにあるが、奇妙な感じが残った。
 今日から展示の「猿猴図」は、誰もがわかる傑作。「竹鶴図屏風」は、竹が洵に美しい。そして国宝であり、今回の目玉の「松林図屏風」。写真図版では何度も見ており、そしてそのよさが自分にはわからなかったのだが、本物を観て敗北した。湿度の高さに感動する絵画など、世界のどこにあるだろうか。信じられない傑作だというのは、受け入れざるを得ない。と言っておいて敢ていうのだが、右半分はダメではないか。左半分しか感動できないのである。それから、左半分も、日本画の王道ではなく、異端的傑作なのではないか。その傑作ぶりが異常であっても。
 6時の新幹線で帰る。7時半には帰宅。楽しい一日だった。