晴。
萩原朔太郎『帰郷者』読了。朔太郎というと、何となく唯美主義者とか、芸術至上主義者とかいう思い込みがあったのだが、本書における太平洋戦争前の時局的発言など、二枚腰、三枚腰で、しっかりした意見を言い切っているのを読むと、勝手なイメージが覆されるようだ。日本の文明的位置をよく理解した、今でも充分読むに足る、堂々たる議論である。文学論も、日本の伝統に通じながら、ヨーロッパ文学をしっかり咀嚼しており、今日でもこれほど透徹した詩観をもつことは容易ではないと思う。新古今とボードレールを同時に論ずること。
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