山下一仁『農協の大罪』

晴。
山下一仁『農協の大罪』読了。極東ブログさん(参照)のところで知った本。末期的な農業の現状を、「農協」という切断面で切っているが、これを書くのは勇気が要ったのではないか。あとがきに、「著者はべつに農協を潰そうといっているのではない。農業で生きていこうとするまともな農業者が努力するのを妨害しないでほしいと、お願いしているだけである」とあるのが、強烈である。日本の農業の現実など知らない者であるから、読んでいて教えられることばかりだったが、ここでも問題は錯綜していて、なかなか簡単な処方箋などはなさそうだ。ただ、農協が、農業従事者の八割を占める兼業農家の利益を代表し、残りの(意欲ある)専業農家の方を向いていない、否、むしろ妨害すらしているというのは、気が重くなるような話である。そして、やはり、官僚の言いなりになってきた、プリンシプルのない政治家の問題でもあると思った。これは、政権が替っても、簡単には解決しないのではないか。
 ちなみに本書は、九箇月で八刷を数えている。読む人には読まれているのだな。

農協の大罪 (宝島社新書)

農協の大罪 (宝島社新書)