東浩紀『ゲンロン戦記』 / ジョイス『ダブリンの市民』

晴。
すっきりした。

NML で音楽を聴く。■バッハのフランス組曲第三番 BWV814、第四番 BWV815 で、ピアノは岡田美和(NMLCD)。

大垣。
ミスタードーナツ大垣ショップ。ホット・スイーツパイ りんご+ブレンドコーヒー393円。武満徹著作集を読む。ここのところの自分を省みるに、感覚だけでやっていると流されてしまうということがある。武満さんのように、手垢のついていない言葉(遣い)で、大きく投網を投げかけていくことは大切だと思う。つまりは思想。


東浩紀『ゲンロン戦記』落掌して直ちに読了。とてもおもしろかった。著者のいうとおり、本書は著者のとてつもない「幼稚さと愚かしさ」の記録であるが、また密かなかつ堂々たる「自慢」の書でもある。わたしは東さんの本は昔から購入して読んできて、いわゆる思想・批評系の地方(非関東圏)の「亜インテリ」(=ニセインテリ)の読者であるといっていいだろうが、東さんがそういうところから少しずつ離れていったことが記してある。つまりはわたしは優雅でどうでもいいヒマ人であり、東さんはそういう人間は結局ダメだとほぼ結論したのだなと感じた。それにしても本書を読んで、東さんは「愚か」ながら、よくやってきたと素直に思う。本書に「1000万円」とか、具体的なカネの話がたくさん書いてあるのもなるほど感。

しかし、最後に「啓蒙」に行き着くとはね(第六章)。特権的な知識人が愚かな民衆の蒙を啓くというのが、いまやるべきことというのかしら。東さんは「啓蒙」は現在にあって反時代的な試みだというが、そうなのだろうか。わたしは、いまはどこへ行っても「啓蒙」しかないと思っているのだが。

市民公園の駐車場に車を駐めておいて、散歩。曇ってしまった。



ここまで市民公園。







 

ジョイス『ダブリンの市民』読了。結城英雄訳。ジョイスを読むのは初めてだな。この20世紀を代表するともいわれる作家についてわたしの中に語ることは何もない。本書の極めて素朴な感想を記しておけば、クラいの一言。陰陰滅滅というか、ジョイスは何でこう Dubliners に対して皮肉っぽいというか、辛辣なのか。最後の「死者たち」など、感動的な名篇かと思ったら、ひどいどんでん返しである。「…ダブリンの恥部を暴いたのは、芸術家として『民族の良心』を創造しようとする使命感による」(p.446)と訳者は書いているが、本当にジョイスはそんなことを信じていたのだろうか? とすれば笑わせる話ともいいたくなるが…、まあしかし自分に拠って他人を裁断するのもどうかと思われるしな、措こう。短篇集としては、確かに読ませるしおもしろいが、とにかく皮肉っぽい。こいつらはクズだとジョイスが叫びたがっているのがありありと読み取れるが、さすがに20世紀を代表する作家、えらいもんだ。

ダブリンの市民 (岩波文庫)

ダブリンの市民 (岩波文庫)

  • 作者:ジョイス
  • 発売日: 2004/02/19
  • メディア: 文庫