こともなし

祝日(勤労感謝の日)。晴。

非合理的な領域にも、正しい正しくないはあると思う。それは論理ではなく、直感で判断せざるを得ないが。しかし、その領域のほとんどは探求によってのちに論理化可能な筈であるとも思う。

NML で音楽を聴く。■バッハのパルティータ第五番 BWV829 で、チェンバロは辰巳美納子(NMLCD)。この人には独特の感受性があるな。よい。■ハイドンのピアノ・ソナタ第五十九番 Hob.XVI:49 で、ピアノはジョン・オコーナーNMLMP3 DL)。■シューマンの「子供の情景」 op.15 で、フォルテピアノは小倉貴久子(NMLCD)。おもしろいというかすばらしいというか。この演奏者は変化球ピッチャーじゃないね。堂々たる本格派のストレート勝負だと思う。この人の「ダヴィッド同盟舞曲集」が聴いてみたい。

あんまりいい天気なので、昼から、少し離れたところにある BOOK OFF である江南赤童子店へ行ってみる。近所の各務原インター店はいつもあまりよいものがないので、いかない。江南赤童子店は愛知県で、自宅から車で30分くらいか。いつもながら、100円文庫と新書を中心に見る。それほど驚くような発見はなかったが、それでも結構買った。佐藤正午佐藤亜紀の小説、多田富雄先生、岩波文庫赤のズーデルマン(なつかしの相良守峯訳)、平凡社ライブラリーのブレイク詩集など。講談社文芸文庫の木下杢太郎随筆集があったが、ここでも高価で、断念。ひさしぶりに BOOK OFF で流行歌を聴いたなあと思う(まったく知らない曲ばかり)。レジの女の子、めちゃめちゃ無愛想。でも、それは別にどうでもいい。意外とお客さん、いるかなと思った。

帰りに「珈琲屋 明楽時運 掌福 各務原店」に寄る。「明楽時運」は「アラジン」と読むらしい。オシャレな喫茶店だが、ふつうに「ホットコーヒー」といって注文したコーヒー(450円)は特においしくも何ともなかった。コーヒーの香りが全然しない。席は八割がた埋まっている感じだった。
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BOOK OFF で買った、池内紀さんの新書本『闘う文豪とナチス・ドイツ』を読む。ここで「文豪」というのはトーマス・マンのこと。なかなかおもしろい。読んだところまででは池内さんはマンを無謬の人のように全肯定で書いているが、つまりこれは暗に現代日本批判なのかも知れない。つまり、ナチス・ドイツ現代日本を重ね合わせているわけだ。というのはわたしの勝手な空想だが(あとがきを読むと、そこまで意図的な書物ではないかも知れない)。わたしはそれほどマン全肯定の人ではないけれども、まあわたしに何がわかるかというところである。マンはナチスによってドイツからほっぽり出されたので、ある意味では誤謬をおかさず、運がよかったともいえる。それだけ、亡命者として、ナチス政権下のドイツ国内の人間にはむやみときびしかった。

ウェブで見られる川本三郎さんの本書書評ではマンが自発的に亡命したように読めるが、これは明白に誤読である。本書からわかるが、マンはたまたまドイツから出たところ、ナチスから帰国禁止の通告を受けたのだった。本書が正しければであるが。
 ぐぐってみると、池内さんが著者インタヴューで言っておられるのは、マンが様々な情報を決して鵜呑みにしていないということである。それは既に読んだ部分にもあった。そして、情報が安直に手に入る現在において、という言い方をなさっている。

早寝。