こともなし

晴。

NML で音楽を聴く。■バッハの平均律クラヴィーア曲集第二巻 ~ 第七番 BWV876 - 第十二番 BWV881 で、ピアノは園田高弘NMLCD)。■ベートーヴェン弦楽四重奏曲第四番 op.18-4 で、演奏はカザルス四重奏団(NMLCD)。

昼食後、二時間くらいぼーっとする。


ミスタードーナツ イオンモール各務原ショップ。チョコファッションボール+ポン・デ・シュガーボール+ブレンドコーヒー344円。またまた『鬼子の歌』の続き。早坂文雄、深井史郎、山田一雄の章を読む。これで 542ページ中、ようやく 345ページだけ読んだ。まったくわたしは本書を読了できるのであろうか。片山杜秀さんはわたしにはしんどいのであるが、よたよたしながら読んでいくと多少思うところもある。片山さんは、音楽に徹底して観念を読んでいるのだろうかと感じる。じつに理屈っぽい。そしてそれは、(これも)徹底したアナリーゼ(楽曲分析)に裏打ちされている。なので、そこのところが素人のわたしには何ともさっぱりわからない。思えば片山さんが監修している NAXOS の「日本作曲家選輯」に収録されている楽曲も自分にはさっぱりわからないものが少なくなかったが、なるほどこんな風に観念的に聴くのだなあと納得がいった感じがする。
 それから、もうひとつ。片山さんは話をおもしろくするためにか、時に呆れるほどの紋切り型を使うことを辞さない。特にベートーヴェンなどはそうで、敢てそうしているのだと思うが、「初心者」的なまでに紋切り型のイメージで統一されていて、ああ、たぶん片山さんはベートーヴェンがきらいというか、低級(あるいはウンザリさせられるほど「高級」)だとすら思っておられるのだろうなと、勝手に推測する。バッハとかも時にそう。逆に(?)、モーツァルトなどは名前さえ出てこない印象だ。モーツァルトの紋切り型というものも一般にあろうが、片山さんはそれは使わない。なるほどという感じ。
 どうもやはり本書は音楽の本ではなく、日本の近現代史の本なのかなと思われ出した。特に、戦争の影は濃い。

先日武満徹の伝記を読んだせいで、このところぼーっとしているとよく武満のことを反芻する。僕はまだ武満徹の音楽をしっかり聴いていないのだが、それなのに武満はわたしに極めて慕わしい人になったようだ。武満の言葉をつらつら思い返して、そうだ、そうだよなと思うことが多いのである。武満は都会人だったのに、自然への感受性が大変に強かった。これはわたしだけかも知れないが、田舎者でこよなく自然を愛したベートーヴェンの音楽と、似たような領域が刺激される感じがする。僕には、ベートーヴェンの構築性とか主題の徹底した使い回しとか、正直言って大して重要でないのである。まあしかし、それは自分が音楽というものをわかっていないせいかも知れない。

僕のちょっと好きな武満のエピソードがあって、武満はメシアンを尊敬していたのだが、晩年にメシアンから直接、「オーケストレーションがすばらしい。誰にも真似ができない」というようなことを言われて、奥さんに対してちょっと得意気だったそうである。これは奥さんによる話。

西村玲さんの自殺についてあんまり言及されたので、それでムカつく人がぞろぞろと出てきた。まったくいろんな人がいるものだ。ツイッターを見ていて強烈に後悔するのはこういう時である。いや、君たちの気持ちはわかるのだけれどね。

夕食後、二時間ほどぼーっとする。

モーツァルトオーボエ四重奏曲 K.370 で、演奏はブリテンオーボエ四重奏団(NML)。これはすばらしい。弦もいきいきしてよいけれど、何といってもオーボエ。ため息の出るような充実ぶりだ。名演という他ない。(追記:このディスク、記憶にあるような気がしたので検索してみたら、ここで既に聴いていた。あんまり高評価でないね笑。エーカゲンなもんだ。)

A Tribute to Janet

A Tribute to Janet

■ベント・セアンセンの「鳥と鐘」で、トロンボーンクリスティアン・リンドベルイ、指揮はクリスティアン・エッゲン、オスロシンフォニエッタNMLCD)。■バーバーのピアノ・ソナタ op.26 で、ピアノはレオン・マッコウリー(NMLCD)。この曲は一月ほど前にも聴いているが、シリアスな力作だ。バーバーのピアノ曲には、つまらなくはなくても、何でこんなの書いたのだろうと思うような曲もあるが、気合の入った曲もあるわけだ。しかし、テキトーでユーモラスな曲の方がよいという人もいるかも知れない。それはそれでわかる。■細川俊夫(1955-)の「旅 VIII」(NML)。これはオリエンタリズムではないのか。まさしく人工都市・トウキョウでシミュレートされた、深さのない「日本」である(って詳細は知らず、テキトーなことを言っているが)。その意味では、正しく現代日本そのものというべきかも知れない。もっともこれは外国人の演奏家たちによるものであり、日本人の演奏家であったらこうではないかも知れないし(というと外国人演奏家に対する侮辱になってしまうが)、そもそもこの曲だけでは正確な判断などできるわけもないが。ただ、日本人作曲家の曲でなかったら、わたしは直ちに聴き止めていただろう。
HOSOKAWA/ VOYAGE 8/VOYAGE X NOZARASHI/STUNDEN-BLUMEN

HOSOKAWA/ VOYAGE 8/VOYAGE X NOZARASHI/STUNDEN-BLUMEN

細川俊夫の「リート」で、フルートはヘレン・ブレッドソー、ピアノはウルリヒ・レフラー(NML)。やはり自分には悪しきオリエンタリズム、こういう言い方はどうかとも思うが、「西洋人の期待する日本」しか聴き取れない。どうしようもなく浅くて、聴いていてオリエンタリズムによる一種のいらだち以外、何の感情も湧いてこない。あとは、日本人演奏家の演奏を聴いてみるしかないのか(ムダな気がするが)。細川俊夫現代日本の作曲家の中では、海外でも特別よく演奏されるのであるが、何ということだ。

ブリテンの「幻想曲」 op.2 で、演奏はブリテンオーボエ四重奏団(NML)。口直しにブリテンを聴く。これぞ血の通った音楽というものだ。

ちょっと検索をかけてみたが、細川俊夫武満徹以降もっとも重要な作曲家(たぶん日本人のということだろう)だそうである。非常に多くの人が細川は重要だといっているので、まあ自分がまちがっているのだろう。いつものことである、仕方がない。やはりわたしに音楽はわからないのだな。