晴。
NML で音楽を聴く。■バッハのブランデンブルク協奏曲第一番 BWV1046 で、指揮はラース・ウルリク・モルテンセン、コンチェルト・コペンハーゲン(NML)。
Bach: The Brandenburg Concertos
- アーティスト: Concerto Copenhagen
- 出版社/メーカー: CPO
- 発売日: 2018/11/02
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
外はおだやかに晴れてよき天気であり、庭(というほどのものではないが)に佇んでいると何の不満もない感じがする。しかしいまや地水火風、どのエレメントからも我々は遠ざかってしまったな。特に、火というものからは遠い。火に魅入られる子供は要注意であるともいうが、それほど火には魅力と危険があるということだろう。わたしも焚き火というものがなつかしい。ウチは百姓屋なので老両親は落ち葉を炊いたり木を燃やしたりしていて、いまでもまあ見ようと思えば見られないこともないが。それでも最近では近所に家が建て込んできて、隣家への迷惑というものも考えねばならなくなった。そんなこんなで、現代文化から火のエレメントは注意深く消されているのを感じる。安全球体の中に火は存在しないのである。
こんなゴソゴソがウチだ。大したことはないのである。かつては暖かい日、ウチの猫がここで寝るのが好きだった。
■スカルラッティのソナタ K.318、K.427、K.514、K.431、K.11、K.43 で、ピアノはクリスチャン・イーレ・ハドラン(NML、CD)。悪くない。
カルコス。「群像」での中沢さんの連載がひとまず完結した。「第一部了」の文字を最後に見たときは、多少の感慨があった。今回のは(いつもよりは)かなりわかった気がする。漢詩や水墨画、セザンヌなどでレンマ的知性のはたらきを説明しているところなどは特に納得した。それから、手前ミソであるが、全然リニアでない自分のブログの書き方も、たんなるスキルの欠如のみならず、レンマ的知性のはたらきにわずかでも従おうというものなのだと気づいた。まあそれはいいけれど、いまや AI の急速な進歩など、ロゴス的知性のはたらきが全面化する事態になっている。もちろんレンマ的知性がよくてロゴス的知性が悪いとかそんな単純な話ではなくて、それらは誰にでも備わっている生命体のメカニズムということであり、人間は特にそのレンマ的知性とロゴス的知性の両輪がうまくはたらいてここまできたのに、いまやそのバランスが崩れてしまっているということなのだ。これは世界的な傾向であり、原理的にはかならずしもオーソドックスでない西洋的知性が、世界中を広く強く覆い、それが究極の段階に至ろうとしているのが現在なのである。我々がこれほどまでにレンマ的知性を軽視するようになったのは歴史に先例がなく、正直言ってこれからどうなるのかまったく予想がつかない。おそらくは、人間の AI化ということになっていくのではないかとぼんやりと想像している。
まあ自分の感想などはいいので、早く単行本にならないか待ち遠しいものがある。半年か、一年か、早く出るといいなと思っている。
つまりは、たんなるアーラヤ識の探求だけではもはや充分でないということである。それだけでは、現在の事態を変えることはできないのだ。
#
伊藤清『確率論と私』読了。伊藤清(1915-2008)は、独創的な確率論の構築に貢献した世界的な大数学者である。最近では、伊藤の理論による数理経済学的な応用が大発展し、それでも有名になった。しかし、それはまあよい。本書はエッセイ集であるが、この超一流の数学者が、深いセンチメントをもっていることに感動せずにはいない。これこそが日本流の数学者だといいたくなる。
このところずっと理系の本を読んでいなかったのだが、また読みたくなってきた。ただ、自分はまだ自分に合った数学書や物理学書の読み方ができていない。結局、自分は理系の学者を目指して大学に残らなくて正解だったと思う。そもそも能力不足であったし、様々な意味で自分は理系の何かと出会いがなかった。先生でも、友達でも、本でも。その意味で、伊藤先生はじつにうらやましく感じられるし、その文章を読んで感動させられるのでもある。自分は思うが、「出会い」というのも能力であり、自分にはその意味でも理系的な能力がなかった。ただたんに頭がよいとか、それだけではダメなのである。
それにしても、繰り返すが、感動的な本だった。もしかして本書に感動できる人は、あまりいないのかも知れないが。昔の大先生はほんとえらかったな。
- 作者: 伊藤清
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2018/10/17
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る
というわけで、手許に渡辺信三『確率微分方程式』があったのでちょっと目を通してみたが、いまの自分が到底手を出せるものではなかった(というか、手を出せる日がくるのでしょうかという感じ)。前提とされる知識にあまりにも乏しい。ただ、重川一郎氏による解説がまさに自分のような者のためで、何となく雰囲気的にはわかるというありがたいものでした。しかし数学本、おもしろいわ。まだ何か読みたい気分。
- 作者: 渡辺信三
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2018/09/11
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る