芥川喜好『時の余白に 続』 / アルバム「Glenn Gould Gathering」

曇。

NML で音楽を聴く。■モーツァルトのピアノ四重奏曲第二番 K.493 で、ピアノはデジュー・ラーンキ、他(NMLCD)。

ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲第十五番 op.144 で、演奏はケラー四重奏団(NMLCD)。ECM らしい、スタイリッシュで美しい演奏だ。ショスタコーヴィチだからもう少しハードエッジでもいいと自分などは思うが、レヴェルの高い演奏であることは疑いない。ケラー四重奏団というのはなかなかの実力者たちであるようだ。ショスタコーヴィチは現在の自分の静かな絶望にいちばん近い音楽であるような気もする。■ツェムリンスキーのピアノ三重奏曲ニ短調 op.3 で、演奏はボザール・トリオ(NMLCD)。ブラームス+α という曲で、まだあまりツェムリンスキーらしくはない。初めて聴くと思っていたが、聴いたことがあるようにも感じるけれど、それはあまりにもブラームスだからそう思えるのかも知れない。また、ツェムリンスキーは壊れているので、後始末が面倒といえば面倒である。悪くない曲だけれどね。■ヒンデミットの「葬送音楽」で、ヴィオラはキム・カシュカシャン、指揮はデニス・ラッセル・デイヴィス、シュトゥットガルト室内管弦楽団NML)。これも ECM

ラクリメ〔ブリテン:ラクリメ/ペンデレツキ:VA協奏曲、他〕

ラクリメ〔ブリテン:ラクリメ/ペンデレツキ:VA協奏曲、他〕


晴れてきた。図書館。市民公園がいい感じになっている。


 
ミスタードーナツ イオンモール各務原ショップ。ポン・デ・リングブレンドコーヒー378円。図書館から借りてきた本をさっそく読む。芥川喜好『時の余白に 続』というもの。新刊の棚にあったみすず書房の美しい本で、たぶん前著も借りて読んでいると思う(参照。わりと好意的に書いてあるな。自分もそれから変ったのだ)。著者は読売新聞の美術系の記者らしく、紙面でコラムを連載していて、みすず書房がまとめたということのようである。読み始めてお説教が少なくなく、あまりわたしの好みではないことがすぐにわかる。また、文章も新聞記者のものであることは紛れもなく、悪くはないが次第に速読に。一時間くらいかけて三分の一ほど読むつもりであったが、四〇分で 300ページを読了。本業であろう美術関連の文章も、自分は多少の疑問を禁じ得なかったが、まあわたくしのいうことであるから信用されるには及ばない。しかしまあいくつかの文章には興味を惹かれるものもあったことは確かだが。著者は自信たっぷりであるけれど、自分がさほどでないことに気づいていないのだと思う。ネットの無名人の中にも、著者よりもののわかった人間がいくらでもいることは確実である。まあ、そんなことはどうでもいいのだが。反骨の人なのは悪くないのだけれどね。

時の余白に 続

時の余白に 続

 
『禅海一瀾講話』を読んでいると自分のクズぶりがわかってどうしようもないのであるが、一生凡夫から抜けられないような自分でも気持ちを奮い立たせてくれるのが妙である。とても大乗の精髄を会得できる器ではないが、それでも精進したいものだ。そのうち、法器を得る若い人も出てくるにちがいない。それを祈りたい気持ちである。

坂本龍一と他のアーチストたちによるアルバム「Glenn Gould Gathering」を聴く。ゆたさんに勧められたものであり、だいぶ前に MP3 Download で購入していたが、全体で 100分近くあり、ようやく聴くことができた。CD ではおそらく二枚組であり、最初の七曲を聴いたところでいったん休憩を入れた。
 最初の五曲は教授(坂本龍一)によるバッハを元にした即興演奏である。グールドがもっとも得意としていたのはバッハであるが、教授が弾いた曲はグールドはピアノでは録音していない(グールドは「フーガの技法」はオルガンで弾いており、しかも全曲すべては録音していない)。まずは前菜というところである。第六曲と第七曲はノイズ系アンビエント(?)に教授のピアノの即興演奏が入るというものであるが、いずれも教授のピアノの存在感がありすぎて、ノイズの方が拮抗できていない。教授のピアノは、テキトーに弾いているようでバッハっぽいという高度なもので、ノイズの方はなんとか及第点というところではないか。「波の音」みたいなのは、ちょっと安易ではないかと思うくらい。
 第八曲以降は、クラシック系のピアニストであるがテクノも弾くという、フランチェスコ・トリスターノによるピアノ演奏が続く。グールドが愛したギボンズやスウェーリンク、それにグールド一〇代の頃の若書きのピアノ曲二曲も混ぜて弾き、説得力を感じさせるよい演奏だ。ギボンズやスウェーリンクは相当に古い曲であり、それと明らかにシェーンベルクっぽいグールドの小品を続けて弾いて、違和感なく聴かせるのは大したものである。これはクラシック好きにもふつうに楽しめる演奏だろう。終曲の「コーダ・フォー・グレン」というのは、これもノイズに教授のピアノがかぶさる曲であり、このアルバム中もっとも音楽的価値が高いのではないかと(勝手に)判断した。ここでのノイズは自分は「よいノイズ」であると思う。ただこれ、このアルバム中いちばんポピュラー音楽風で(ジャズ?)、あまりグールドとは関係なさそうな気もしたが。
 全体としてなかなかよいものでしたね。ただし「グレン・グールド」については(グールド自身の曲を除いて)お題以上のものではなく、これにグールドを求めるものではないでしょう。しかし、教授、さすがですね。そもそもピアノの音が非常に美しいし、あらゆる音楽のジャンルを知り尽くしている教授ならではの即興演奏であったと思う。

グレン・グールド・ギャザリング

グレン・グールド・ギャザリング

ところで、MP3 Download はよいのだが、ライナーノーツを PDFファイルか何かで添付してくれるとありがたいのだけれど。それとも、ライナーノーツを見たかったら CD を買えということか知らん。NML はたいていのアルバムにちゃんとライナーノーツなどが PDF で付いているのになあ。