小林信彦『古い洋画と新しい邦画と』

雨。
早起き。

NML で音楽を聴く。■バッハの管弦楽組曲第三番 BWV1068 で、指揮はフランス・ブリュッヘン、エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団NML)。これは…。この曲の決定盤的演奏ではないか。ブリュッヘンって大指揮者だと思っている。CD を買ってもいいくらい。しかしこれ、18世紀オーケストラじゃないのですね。「エイジ・オブ・インライトゥメント」というのは「啓蒙の時代」ということかな。

バッハ:管弦楽組曲 全曲

バッハ:管弦楽組曲 全曲

パーセルの四声のソナタ第一番、第二番、パヴァーヌ ト短調で、演奏はパーセル・クァルテット(NMLCD)。パーセルがこんなにいいとはな。■シューマンのピアノ四重奏曲 op.47 で、演奏はダニエル・ホープ、ウー・ハン他(NML)。うーん、大好きな曲なのにぴくりともしなかった。こちらがいけないのかな。
Mahler/Schumann/Brahms: Piano

Mahler/Schumann/Brahms: Piano

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第五番 op.24 で、ヴァイオリンはヨゼフ・スーク、ピアノはヤン・パネンカ(NMLCD)。後世に残したいスタンダードな演奏。力強くて美しくて、すばらしいベートーヴェンですね。

寝過ぎなわたくし。


オウム真理教関係者の集団死刑執行で、また中沢さんが叩かれているな。経済学者の田中秀臣先生や物理学者の菊池誠先生のような優秀で信用できる方たちがツイッターで叩いているのを確認した。「幻惑する知」、「凡庸なるロマン主義者」とか「素朴なオカルティスト」とか言われている。まあ、そうなのかな。いまの一流の知識人の程度がこれだから、日本もむずかしいところにきている。さしずめ、こういう僕も中沢新一に騙された哀れなおっさんということになるのだろうな。愉快である。



それにしても「正義の味方」ってのはコワイな。これほど明敏で判断力も優れた人たちを盲目にするのだから。この人たちですら、「科学」と「科学教」がごっちゃになっている。東洋思想もついに息の根を止められたのだ。ってまあ、自分などがいくら吠えてもどうしようもない。黙ってやれるだけのことをしよう。

しかし、脱力して気力が萎える。自分のやっていることはムダなのだろうなと20代の頃からずっと思ってきたが、いまでも同じだ。誰の役にも立たない。ゴミである。まあしかし、わかっていたことではないか。非力無才ではあるが、もう少しがんばろう。

老母の作るおいしい御飯を食べて復活しました。母もビールが飲めるくらいに元気になってきた。わたしは本当に食いしん坊である。食事がおいしくいただければ、なんとか生きていけると思う。毎日のように野菜の料理が三種類くらいある。たいていは、ウチで採れたものだ。皆んな魚は鮮度がいちばんって知っていると思うけれど、野菜もそうなのですよ。貧乏人だからって、マズいものを食べているとは限りませんよ。限界集落の漁村で、二人暮らしの老夫婦が一流料亭並においしいものを食べていてもわたしはまったく驚かない。いや、きっとそうだと思っている。バカですか、わたしは?


図書館から借りてきた、小林信彦『古い洋画と新しい邦画と』読了。クロニクル2015年。僕は東京国の人にはあまり興味がないが、著者のような本物の都会人には脱帽する。別に自己卑下するつもりはないが、土台からしてかなわない。このシリーズ、書かれているのはもっぱら映画の話で、映画を見ない自分にはちんぷんかんぷんなのだが、それでも読まされてしまう。映画と関係ない話ではおやと思うことが結構あって、例えば本書には大瀧詠一の『A LONG VACATION』の話が出てくる。ありゃ、ついこの間聴いたばかりではないか。それ以外でも本書には何箇所に大瀧詠一の名前が出ていて、大瀧さんは晩年、いろいろなところに出没しているなあと認識を新たにした。そのうち、誰かが従来の大瀧詠一像を書き換えるだろうし、書き換えねばなるまい。
 それから、戦争と映画関連で大岡昇平の名前も目を引く。自分は学生時代、大岡昇平は当時文庫本で読めるだけのすべてを読んだ筈だ。いま書庫(?)を覗いてみたら、20冊ほどあった。著者は大岡昇平では『野火』を第一に評価していて、これは大多数の意見でもあろう。僕は『野火』は小説それ自体もであるが、丸谷才一氏の『文章読本』でそのレトリックが詳細に分析されていたのが印象深い。マイナーな頃の丸谷氏は、後年とちがい決してバカにしたものではなかったと思っている。それはともかく、大岡昇平というと、自分にとっていちばん印象深かったのは何といっても『レイテ戦記』である。読んだとき圧倒されたのをいまでも覚えている。これが大岡流の「小説」、いや確か氏は「小説家の夢」と言っておられたのではなかったか(うろ覚えである)。誰だったか、トゥキュディデスと比較している人がいたが、なるほどと思ったことであった。大岡氏は人間というものを信用しておられなかった。自分には、それは当然のことと思われる。
 それにしても、本書には戦争と安倍首相の話題が多い。僕は、著者が若い世代をどう思っているのか、知りたいような気がするが、著者は若い世代のことは決して一般化しては書かない。若い女優たちには希望をもっておられるようだ。石田ゆり子、大塚寧々、真木よう子綾瀬はるか堀北真希あたりがお気に入りということで、なるほどなーと思う。そして、映画「海街diary」を絶賛しておられた。これもなるほどである。いや、よく知らないんだけれど。

 
小林秀雄の『ドストエフスキイの生活』を読み始める。ひさしぶりに小林秀雄全集を紐解いている。