高橋源一郎『お釈迦さま以外はみんなバカ』 / 大岡信&谷川俊太郎『詩の誕生』

雨。
起きる前にとてもおもしろい夢を見ていた。詳しくは書かないが、文化財の鑑定に関する夢で、細部まではっきりしており、こういうクオリティの高い夢はめったにない。何でそんな夢を見たかは謎だ。じつはその前に見ていた夢もかなり覚えている。ちょっと悪くない感じ。

寝る前は松坂和夫先生の数学書を読んでいたのだが。

NML で音楽を聴く。■ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第三番 op.2-3 で、ピアノはヴィルヘルム・ケンプNMLCD)。ケンプのすばらしくてすごいことがようやくわかってきた。■シューベルトのピアノ・ソナタ第十二番 D625 で、ピアノはワルター・クリーン(NMLCD)。■ブラームスピアノ五重奏曲 op.34 で、ピアノはスヴャトスラフ・リヒテルボロディンSQ(NML)。1958年のライブ録音。リヒテルボロディンSQ のこの曲の録音は、自分はたぶん初めて聴く。音の状態はよくないが、それでもデジタル処理のおかげで演奏を堪能できる程度には改善されていてありがたい。演奏は冒頭ボロディンSQ のとんでもないミスとかがあったりはするが大変に熱のこもったもので、特に第三楽章はまさに鬼神をも動かす演奏で感動なくしては聴けない。リヒテルはいまだにライブ音源が発掘されつづけていてとても全貌が把握できないくらいだが、こういうのを聴くとリヒテルの全演奏が録音されていなかった(当り前だが)のが痛恨に思えるくらいである。まさに歴史上最高のピアニストだといえるだろう。もちろんボロディンSQ も超一流であるし。

Schumann/Brahms: Richter

Schumann/Brahms: Richter

ブラームスが天才でないというのはわかるのだが、聴いているとどうしても敬愛の念を抱かざるを得ない。豊かな情感と卓越した作曲技法をもっていた、孜々たる努力家であったと思う。自分はこれからも聴き続けるだろう。■ハイドン交響曲第九十六番 Hob.I:96 で、指揮はクラウディオ・アバドNMLCD)。
 

高橋源一郎『お釈迦さま以外はみんなバカ』読了。昨日も書いたが、はは、ふざけた題名ですね、って思ったら、何とこれ、玄侑さんの言葉だったのか! うーん、さすが玄侑さん、じゃなくてこれは源一郎さんの本でした。いやあ、笑った笑った。中身もふざけた本だ。何だかあんまりおかしすぎて、麻痺してそのうちふーんくらいで淡々と読んでいたが。ところどころちょっとマジメな文章もあって、そういうのもよかったりする。というか、冒頭の「三十一文字のラヴレター」は反則だろう。いきなり泣かせるのである。でも、本書の九割五分はふざけているので御安心を。しかし源一郎さん、よくもこんなに下らない本(スミマセン)ばかり読んでいるなあ。また世の中には下らなすぎて突き抜けている本があるもんだ。いや、本当は下らなくないんだけれどな。まあ何でもいい、人生クラい人は読むといいよ。ちょっとだけアカルクなれるんじゃないだろうか。

 

大岡信谷川俊太郎『詩の誕生』読了。対話篇である。おもしろかった。題名にもなっている「詩の誕生」についてから始まり、詩を様々な角度から語っている。中身については書けないが、じつに内容豊富な対話だった。僕は谷川俊太郎の詩はとても好きで、一方大岡信の詩はよくわからないのだが、大岡の散文はじつに読ませるし、本書でも大岡の深い学識と成熟した視野には感嘆させられた。谷川俊太郎が詩に関して本能的(?)で、大岡信が学者的なのがうまく噛み合って、驚くような視点が出ている。本書で語られていることは多いが、それでいて何か同じひとつのことを延々と巡っているような感じがさせられるのも妙だ。で、自分のことも思ったのだが、自分は詩に関しては「追求してやろう」という気が全然起きないのですよね。それがよい気がする。いつも適当に読んで、適当に感想を書いているだけで充分な感じだ。そのうち知らぬ間に詩が好きになった、ということになった。でも、詩なら何でもいいの正反対ですね。自分は詩に関してははっきりと選り好みする。自分にとってダメな詩人は、鼻も引っ掛けない。いやそんなで、本書を読んでため息をつきたい気になりました。もちろん肯定的なね。これもまた、岩波文庫にふさわしい本だと思う。

詩の誕生 (岩波文庫)

詩の誕生 (岩波文庫)