鮎川信夫『詩集 難路行』

曇。今日は晴れる筈だったのだけれどな。洗うものがたくさんあるので困る。
極めて変(というか変態的?笑)な夢を延々と見る。何であんな夢を見たものかな。かなりはっきりと覚えている。少しノスタルジックなところもあった。

このところ本も読んでいないし音楽も聴いていないので、自分の顔に不満。澁澤龍彦石川淳の読書を美容術(?)と見做す考え方に賛同していたが、わたくしも同じ考えである。三日本を読まなければ士大夫失格、であったか。まさしくいまのわたくしは士大夫失格である。

心が音楽を欲しているところがある。

モーツァルト交響曲第二十九番 K.201 で、演奏はコンセルトヘボウ室内管弦楽団。なかなかいい演奏。美しい音楽が書かれてしまったものだな。よくもこういう音楽が人間から生まれたという気がする。


ベートーヴェン交響曲第七番 op.92 で、指揮はイヴァン・フィッシャー、コンセルトヘボウ管弦楽団。俗な曲で普段はあまり聴かないが、何となく聴いてみた。冒頭の導入部でいきなり感動する。ベートーヴェンの根源的な生命力に触れた思いがした。聴いてみたらやはりまあ俗な曲だったが(笑)、湧き上がってくるような生命力はさすがにベートーヴェンである。こういうのを永遠の古典というのであろう。演奏はいまよほどの名演でも驚かない精神状態なので何だが、フィッシャーの指揮は渾身のものといっていいのではないか。コンセルトヘボウ管の上品さをよく活かしているし。ちょっというなら第三楽章、終楽章などは、すばらしいけれど本来ならもっと下品に演奏していい曲。それにしてもレヴェルが高いな。いまだとこれでも CD にならないのだろうな、たぶん。クラシック音楽、聴かれないものな。

父はいつものボランティアへ。
洗濯。今日は寝間着など洗い物が多い。幸いよく晴れてきた。


ひさしぶりにひとりで昼食なので、町の定食屋「3 pigs」へ行く。ここは若い夫婦ふたりでやっている小さな店で、僕は昔から好感をもっているところだ。あまり繁盛しているわけではなく、今日も昼時なのに前に二組しかいない。けれども店はもうだいぶ長く続いているから、なんとかやってはいけているのだろう。以前からよく注文する自家製ハンバーグステーキ1100円をたのむ。ここは調理はひとりなので、多少時間がかかるところが好まれないのだろうか。おおきたきたという感じで食べてみると、どう思ってもやはりふつうにおいしい。何にも余計なことはしていないけれどもね。サラダなども文句はない。まあ行列のできる人気店にはならないだろうけれども、しかしこのままそこそこのホテルの昼食にだって出せることは明白である。ふーんという気持ち。これから外食が増えるから、時々はここへこよう。

面会。エレベーターで父とばったり会う。なので二人で。母は昨日よりももう少し元気になってきたようだ。顔色は相当よくなった。口もだいぶ早口になってきた。我々の食事を考えているようで、いろいろ話した。料理についてや持ってくるものなどをメモ。
ちょっと心配なのは父である。元気がない。帰ってからわかったのだが、まだお昼ごはんを食べていなかったようだ。どうも味噌汁が食べたかったようでよくいく定食屋みたいなところへ行ったら、すでに営業時間が終わっていたらしい。で、どこかで食べてくればよかったのにそのまま面会にきたようだ。帰ってから3時半頃にカップ麺を作っていた。うーん、いかんなあ。しっかりして欲しいのだが。

スーパーで買い物。

日没前、散歩。

 

夕食は買ってきてもらった餃子と野菜炒め、菜の花の和物、ほうれんそうのおひたし、納豆など。父と話すことないねえ。というか、父が気詰まりなようでテレビを見ていろいろ言っても黙っていることが多い。まあ前からそうだったけれど。やはり食べ物がいきとどかないこともあるかなあ。「これで充分」とばかり言っている。昔から「おいしい」とか滅多にいわない人だったし。
テレビで野球を少し観る。ドラゴンズは弱いなあ。

図書館から借りてきた、鮎川信夫『詩集 難路行』読了。暗い詩集である。老いた孤独な老人の徹底的にネガティブな詩。自分はこれまで鮎川信夫をまったく読んだことがなく、予備知識もほぼ0だから、そんな風にでも受け取るしかない。けれども、それは自分にまったく違和感がなく、自分の中にすっと入ってくる。自分も孤独な老人になったら、このように万事ネガティブに暮らすかも知れない。そのように思う。
 けれども、本書の最後に、吉本さんの文章を載せたぺらっとした紙が挟んであった。全部で四ページの短いものであり、「最後の詩集」と題されている。どうやら、本書は鮎川の最後の詩集であり、この紙は吉本さんによる本書の解説のようなものらしい。これがすばらしいものだった。自分の中で鮎川信夫に対するイメージが一気にふくらんだ。まあこれに関しては自分はこれ以上いうことが無理である。鮎川信夫吉本隆明ももっと読んでみたいものである。吉本隆明にいわせると、本書は鮎川信夫の抒情詩集だそうである。『宿恋行』以後、鮎川信夫は本当は抒情詩しか書いていないと。

詩集 難路行

詩集 難路行

それにしても吉本さんの解説を読んでいると、自分が「読む」といっているのはただ活字を追っているにすぎないとつくづく思う。