こともなし

晴。

大垣。ミスタードーナツ大垣ショップ。ホット・セイボリーパイ フランクフルト+ブレンドコーヒー386円。小林信彦氏のエッセイ集を開く。クロニクル、2011年度版だ。震災その日の記事まで読む。政府への不信があらわ。僕も最近までは当時の管政権をバカにしていたところがあったが、いまは必ずしもそうでない。原発事故時の政権内部のドキュメントを読んだからである。管首相は理系であり、しかもたまたま原子力工学に通じていた。そのことが事態への対応において果たした役割が意外に大きかったと思っている。また、変な話だが肝も座っていた。当時官房長官であった枝野氏が「管さんが首相でよかった」と言ったとされるが、肯われるところがある。いや、つまらないことを書いた。

ひさしぶりに虹を見た。虹を見るのは、何故か車に乗っているときが多い。行きはぽつぽつ雨が降っていたが、きれいに上った。

植山類さんが日本で仕事をしていたとき、技術のわからない上司にプログラムの解説をするというのが大きな仕事のひとつだったそうである。まったくバカバカしい話だが、最近でも事情がそれほど変わらないらしいのは、驚くべきであるというか、ほとんど絶望的な話である。もちろん自分は IT業界の内部事情など具体的に知っているわけでないので、これが事実とちがえばむしろ喜ばしいことだ。いまの会社(米 Google)では、上司の方がやたらめったら何でも知っているとは植山さんの談だ。まあ上司がとんでもないハッカーだらけの Google と比較してどうするのということはあるが、日本との差は何なのだろうと思う。
 いま「裁量労働制」の導入が話題になっているが、これは明らかに「定額働かせ放題」を導入するということで、「産業界」とやらの希望であるそうだ。労働者の「派遣労働化」も同じようなことをやって、またかであるが、まあ企業もそうしたいなら勝手にすればいいと思う。しかし、これは明らかに労働者のモチベーションと所得と生活の安定を低下させるもので、そういう働かせ方をして本当にそれは企業のためになっているのか? 自分は企業という場所で働いたことはないが、社員のやる気を削ぐような企業がはたして国際的な激しい競争に勝ち抜けるものなのか? 人件費を削れば経営がラクになるという、確かにそれはそうだが、どうも近視眼的な、場当たり的な対応策だとしか思えない。どうでもいいことを書くが、僕が学生の頃、SONY は世界でも最高ランクの企業のひとつだった。その SONY は、先月発表されたことに 20年ぶりに最高益を更新したという。SONY の CEO は、「自分の社を 20年間超えられなかった」と、喜びの発言ではなかった。SONY の世界的な存在感の低下はもはやはっきりしている、というか、日本の若い人たちにも SONY など特に思い入れのある企業ではないだろう。これは確かに、長期に亙る日本経済の低迷のせいでもあるが、おそらくそれだけではあるまいと、自分は勝手に思っている。
 なかなか「日本などどうなろうと知ったことか」とは割り切れないものであるな。自分は何でも日本がいちばんだった、あの 80年代に育ってきた人間なのだなと思う。確かに、その当時から同時代に対して納得のいかないものを抱えてはいたけれど。自分はたくさんのエリートの卵たちと共に育ってきたが、彼らを見ていて現在の日本はほぼ予想できていた。しかし予想どおりになったとはいえ、まさか本当にそうなるとはという気持ちも大きいのである。自分自身もまた無力であった。何ひとつ決壊を止めることに貢献できなかったという気持ちがある。
  
植山さんなど典型的にそうだが、いまや日本人の優秀な人は、企業であれ学術であれ、もはや日本では働かないという時代になってきた。いや、理系の学問などは僕が学生の頃からそうではあったのだが、それが全面化しつつある。誰が衰退の始まった国で、魅力的でない職場で働きたいか。特に、中国という距離的に近い存在が魅力的になってきた。学術分野でも、世界から中国へ留学する学生の数は日本の大学生の総数と同じくらいになったという。日本からも中国へ優秀な人材が留学するという時代が必ずくる。それにしても、文科省はこの期におよんですら「選択と集中」を止めようとしないのには何ともいう言葉が見つからない。本気で日本の学術(特に理系)を崩壊させるつもりなのか*1。(既に手遅れに近いが。)これまで、このような愚かなことをやった近代国家は他にはない。どうしてこの問題が国民の間で共有されないのかも謎である。マスコミもまさか何も知らないのか。それともバカすぎて事態が理解できないのだろうか。

エラソーなこと書きすぎた。
夜のニュースを見ていたら安倍首相、「裁量労働制」は撤回だそうである(笑)。

早寝。

*1:日本の学術の国際的な地位の低下については、外国では既に研究の対象になっている。自分は読んでいないが、確か「nature」誌も特集を組んでいた筈だ。