『金達寿小説集』

晴。


ベートーヴェンの序曲「エグモント」 で、指揮は小澤征爾サイトウ・キネン・オーケストラ


ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第二十一番 op.53 で、ピアノはユリアンナ・アヴデーエワ。なかなかやるな。


モーツァルト交響曲第二十八番 K.200 で、指揮はトン・コープマンアムステルダム・バロック管弦楽団ハイドンみたいな曲だな。


ハイドンのピアノ協奏曲ニ長調 Hob.XVIII-11 で、ピアノはミハイル・プレトニョフ、指揮はイヴァン・フィッシャー。モーツァルトみたいな曲だな。ついモーツァルトの何番だったっけとか思いそう。プレトニョフは上手い。


ショパンのバラード第四番 op.52 で、ピアノはケイト・リュウ。2015年ショパン・コンクールでの演奏らしい。何というのびやかで素直な演奏! 退屈と凡庸すれすれのところだ。大変おもしろく聴きました。

ゴロゴロしていたらあっという間に夕方。

金達寿小説集』読了。短篇選集。最初に断っておくが、本書の最後に収められている二篇の習作は、読み続けることができなかったので読んでいない。だからそれ以外の小説ということになるが、そもそも自分は著者の小説を読むのは初めてである。図書館にあったのをたまたま借りてきた。読んでみてよかったですね。国家や政治、差別などを扱った作品たちであるが、こういう小説を「おもしろい」というのは不謹慎といわれるかも知れないけれど、小説としておもしろかったというのが偽らざる読後感である。中でも特筆すべきは「朴達の裁判」という短篇で、芥川賞候補にもなったものらしい。まあ芥川賞は「既に新人ではない」という理由で受賞できなかったらしいが、過去の芥川賞受賞作にこれ以上の小説がどれくらいあるか、疑問である。この作品の背景は朝鮮戦争後の韓国のどこかの村で、社会的最底辺層に属する「朴達」というおかしな農奴が、自分でも知らぬうちに反体制的英雄になっていくという話だ。そもそも政治的な小説はいやに深刻なものが多いが、本作は深刻でないことはないけれど、随所に笑いと軽みがあって、したたかに感心させられた(って上から目線のつもりはありません)。何というか、リアリズムなのか寓話なのかわからないというすばらしい出来で、しかも最後、法廷の場面では、主人公の感動がそのまま自分に伝わって、こちらも思わず感動させられた。まさしく「世界レヴェル」の短篇だと思う。
 しかしどうでもいいことだけれど、本書の小説のようなものを読んでいると、いかに自分がぬくぬくのんべんだらりと日々過ごしているか、気付かずにはいない。国家や戦争というものがいかに庶民の人生を翻弄するか、呆然とさせられるものがある(特に短篇「対馬まで」)。国家って何なのかと問われて、自分はまったくわからないと言うしかない。最近のネトウヨあたりは、国家が何をするかという知識を欠いたバカものたちで、こういう奴らこそ戦争になるとうまく立ちまわって、大きな顔をするようになるのは目に見えている。迷惑するのは良識ある人々である。他人の気持ちを想像するというのは人間に必須のスキルであるが、本書などがそのための鑢になるのだなと平凡なことを思った。

金達寿小説集 (講談社文芸文庫)

金達寿小説集 (講談社文芸文庫)