小林信彦『「あまちゃん」はなぜ面白かったか? 』 / 乗代雄介『本物の読書家』

晴。暖かい。
またしようもないことをしていて明け方まで起きていたので、眠って四時間くらいで起きる。

図書館から借りてきた、小林信彦『「あまちゃん」はなぜ面白かったか? 』読了。僕は映画がまったくわからないので本書は正確に評価しようがないのだが、いまやこういう人はホントに稀少になったな。こういう人っていうのは、まともな都会人ということである。いわゆる「東京人」である物書きの中で、数少ない真の都会人であろう。「東京人」とかいって、やたらと東京の地名を文章に散りばめただけの「田舎者」が多すぎる。ここでの「田舎者」とは、田舎者たる自分がいうのであるが、蔑称である。なお、本書は題名に釣られて「あまちゃん」のファンで著者を知らない人が相当数購入したようで、アマゾンのレヴューでは酷評しているレヴュアーが少なくない。まあ、ふつう(?)の人にこのシリーズがわかる筈もあり得ませんよ。

昼から、じつにひさしぶりに県営プール。行ってみたら誰も泳いでおらず、30分くらいひとりで泳いでいた。監視員の方が数が多いという(笑)。何かそれこそ映画みたいな感じがしておかしかった。まあ、おっさんがちんたら泳いでいるだけなのですけれどね。ムダに施設を稼働させて泳いでいるのがムダな奴なわけだが、まあ世の中ムダもあった方がいいのである、とか理屈をつけてみる。

図書館。やる気がない感じだったが、意外と借りられた。ちょっと回復傾向なのかな。市民公園は冬にしては暖かくおだやかな日差しに満ちていて、世界は美しいなと素直に思った。

さらにカルコス。このところ行っては買うか迷っていた Ruby 本をえいやと買う。あちこちでよい評判を見かけるので。それから岩波文庫が「文選」を刊行し出したな。「詩篇」だけでも全六冊の予定で、本当にすべてが刊行されるのだろうか。やはりこういうことはさすがに岩波文庫である。ぼやぼやしているとちくま学芸文庫や古典新訳文庫の後塵を拝しますぞ。

図書館から借りてきた、乗代雄介『本物の読書家』読了。著者のことは何も知らないが、新刊の棚にあったので借りてみた。じつはオビを見て若い文芸批評家がデビューしたのかと思ったのだが、いま読み始めてみたら小説だったのだ。本書は中篇二本、まだ 30代前半と若い著者であるが、既に膨大な読書家であると思しい。知的な仕掛けのある小説を書く、志の高い小説家であるというという印象で、いわば「文学から文学を作る」タイプの作家であり、故・丸谷才一氏が読んだら褒めたのじゃないかとも感じる。その小説には過去の小説・評論から多量の引用がなされており、また作中で柄谷行人を引用してもしっくりくる、固くて難解な文章が印象的だ。才能というのは出てくるものであるな。次の著作が出て図書館に入ったらそれも読んでみたい。

本物の読書家

本物の読書家

気のせいかも知れないが、芥川賞を取りにきているのかなとちょっと思った。それから、心理描写は少し苦手なのかなとも感じたが、それも気のせいなのかも知れない。