結城浩『数学ガール』/エイモス・チュツオーラ『薬草まじない』/吉田耕作『私の微分積分法』

晴。
寝坊した。
音楽を聴く。■モーツァルト:レクイエム K.626(ジョン・エリオット・ガーディナー)。ガーディナーであるからレクイエムの決定的名演を期待していたのだが、予想とは随分ちがった演奏だった。この曲は周知の如くモーツァルトの最後の曲であり、しかも未完の傑作なわけであるけれども、ガーディナーはこの曲に纏わりついている先入観を一切廃しようとしたと思しい。であるからして、従来の劇的なレクイエム演奏を踏襲することなく、純音楽的なクールな演奏に徹している。そこに現れたのは、美しくも多少退屈な、まずまずの声楽曲であった。であるから、この曲に思い入れのある人間は少なからず肩透かしを食うことになろうし、まさしく自分もそうであった。ただ、この曲は自分は弟子(ジュスマイヤーだったっけ)の補筆部分は聴かないこともしばしばなのであるが、このガーディナーの演奏だとその補筆部分が充実している。弟子も頑張ったなあというのが正直な感想で、あんまり見下すものではないと思った。結論するに、この演奏はその補筆部分を聴くべきそれであると云えよう。なお、オリジナル楽器のオーケストラも合唱も、ほぼこれ以上ないというべきすばらしい出来であることを付け加えておこう。

モーツァルト:レクイエム

モーツァルト:レクイエム


テレビのニュースを見ていると、意気消沈させられることが多い。最近は新聞もまったく読まない。本当は、こんなものは一切見ないで済ませられればいちばんいいのであろうし、世界や日本がどうなろうとどうでもいいと達観できればベストなのだろうが、凡人ゆえなかなかそんな風には至れない。まあ、世の中はかしこい人たちが廻していってくれるのだろうが、最近テレビで見る御仁たちはおしなべて顔がひどくて大丈夫かいなと思わせられる。次期アメリカ大統領の顔など、赤鬼というか、まさしく毛唐の顔であるとしかいえない。で、日本やアメリカの財界人たちが赤鬼のツイッターのつぶやきというか恫喝に戦々兢々としているのを見ると、こんなことで大丈夫なのかなとバカなりに思う。かしこい人たち、しっかりやってくださいね。
外は明るくて暖かく、庭でアリの巣を見つけて見飽きない。川はゴミが散乱しているが、水は驚くほどきれいだ。アオサギがウチの樹の天辺で羽繕いをしている。もしかしたら世界の終わりとはこんなものなのかなと思う。考えすぎか。

ここで実装した「コンウェイライフゲーム」を実行してぼーっと見ていると、おもしろくて我ながら見飽きない。これ、ルールが絶妙なのだと思う。そんなに実装はむずかしくないので、プログラミング好きな人にはお勧めします。まあ僕の実装は、RubyLinuxGTK+ でおまけに僕自作の野良Gem まで必要なので、ちょっとマイナーすぎるのだが、Ruby でも Tk を使うとか、それか Python でやればもう少し遊んでもらえるのかなと思う。というか、JavaScript で書けば誰でも実行できるな。むずかしくないからそのうちやってみよう。

図書館から借りてきた、結城浩数学ガール』読了。これはおもしろかった! 数学をまともに扱っている小説として、これは楽しい。ちょっと(いやとっても)ナイーブな、素敵なラブストーリーでもあるし(僕のようなおっさんは、登場人物たちの若さに身悶えしてしまうが)。内容を理解しようと思うと高校二年くらいの数学力が要るので、対象者は限られてしまうけれど、なに、小説として楽しんでもいいのです。理系の大学生なら、問題なく読めると思う。本書のクライマックスで出てくる「分割数」に関しては、僕もここにあるとおりたまたま四苦八苦した経験があるので、さらに興味深かった。主人公が落ち込むとおり、これは見かけ以上にむずかしいのです。また、オイラーの解いた「バーゼル問題」は、答えはいまでは多くの人が知っているけれども、大変な難問だったのであり、それをあざやかな方法で簡単に解いてみせるのもすごかった。しかしこれを読んでいて、僕は本質的に数学に向いていないのだなと再確認した。僕は、ここまで数学で遊べない。でも、楽しい時間を過ごさせてもらいました。続編もあるから、きっと読もう。
数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

それから、プログラミングに関しては巻末の文献案内が参考になりそう。何といっても結城先生ですからね。

エイモス・チュツオーラ『薬草まじない』読了。
薬草まじない (岩波文庫)

薬草まじない (岩波文庫)

吉田耕作『私の微分積分法』読了。優秀な人には物足りないかも知れないが、僕くらいのレヴェルにはなかなか楽しい教科書。高校数学の知識があれば充分読めるので、大学一年生の自習用にぴったりであろう。個人的には数値計算に結構言及してあるのがありがたい。しばらく手近に置いてパラパラ見返してみるつもりである。なお、著者は往年の大先生ですね。
私の微分積分法: 解析入門 (ちくま学芸文庫)

私の微分積分法: 解析入門 (ちくま学芸文庫)