長嶋有『ぼくは落ち着きがない』

晴。
早寝早起き。


バッハのパルティータ第六番 BWV830 で、ピアノはシューラ・チェルカスキーチェルカスキーってほとんど聴いたことがないと思うけれど、これはよいバッハ。それにしても、昔のピアニストって意外とバッハを弾いている。いまのピアニストの方が弾かないくらいなのではないか。ピアノでバッハを弾くというのはグールド以降ということがいわれるけれど、意外とグールドは関係ないのかも知れない。

昼から仕事。

長嶋有『ぼくは落ち着きがない』読了。恋愛模様の(ほとんど)出てこない、学校小説。高校の図書部の一年間を描く。長嶋有らしく淡々と話は進んでいき、ページを繰らせるために事件のようなものが多少あって、最後に図書部はなくなってしまうらしい。題には「ぼく」ってあるけれど、主人公は女の子だ。自分の高校生活にはこの程度の「事件」もなかったように覚えているが、なにせ30年前のことで既に茫漠としている。本書はまさしく高校生が読むといいと思うが、おっさんの自分が読んでもまあまあおもしろく読めた。この小説の初出はちょうど10年前で、長嶋有の他の小説と同じく現実のトリビアルな固有名詞や風俗が出てくるが、それらを見ると既にだいぶ古くさくなっている。まあ、これは著者の意図的なものだから、それはそれでよいのだろう。自分はこれまで生きてきた中で高校生の頃がいちばん楽しかったかなと思っていたのだが、本書を読んで思い出してみるとどうもそれは疑わしくなってきた。「高校生の頃がいちばん楽しかった」と思っているのは、まさしく現在の自分にすぎない。ただ、あの頃は確かに未来は無限であるように無意識で感じていたような気がする。いまでは、人生の終わりというものが少しづつ感じられ、もはや未来は無限にはない。

ぼくは落ち着きがない (光文社文庫)

ぼくは落ち着きがない (光文社文庫)