碧南市藤井達吉現代美術館の「リアル(写実)のゆくえ」展

日曜日。晴。


バッハのフランス組曲第一番 BWV812 で、ピアノはマレイ・ペライア

病の癒えてきた老母が行こうというので、碧南市藤井達吉現代美術館の「リアル(写実)のゆくえ」展へ行ってきました。高速に乗ってウチから 1時間40分くらいですか、碧南市は初めて。名古屋高速から知多半島道路阿久比IC で降りる。途中ちょっと海が見えるいい感じで、空も秋空めいてきれいでした。

碧南市藤井達吉現代美術館は御覧のとおりおしゃれな現代建築で、開館時間直後に着いたのですが駐車場は臨時のそれも相当に埋まっていて、この展覧会の認知度の高さが窺われました。実際中に入ってみると混雑といってもいいほどで、かなり地味なテーマだと思うのですが、日本人もレヴェルが高くなってきたなと素直に思いました。で、展覧会ですが、最近これほど刺激的で満足できるそれはなかったというべきでしょう、すばらしいものでした。テーマとしては明治以降の日本のいわゆる「洋画」の中から、高橋由一以来の「写実」を意識したセレクトが行われていました。いや、おもしろかったですね。先日見た「エルミタージュ美術館展」も西洋の主に写実的な絵画を集めていましたが、こちらが日本人のせいか比べものにならないほどこちらの方がおもしろかったです。明治のどちらかといえば陰鬱な「暗い」写実画から、昭和平成のスーパーリアリズムまで、「写実」のパワーを実感しました。もちろん高橋由一岸田劉生などの大物はさすがですし(岸田がこんなにすごいとは思っていませんでした)、横山松三郎や五姓田義松などは発見でした。靉光や長谷川潾二郎は写実というよりは既に幻想絵画に近いですがいいですし、河野通紀や犬塚勉、木下晋、磯江毅、水野暁、本田健らのスーパーリアリズムのすごいことといったら! 特に犬塚勉は初めて実見しましたが強烈に魅力的で、これは画集が欲しくなりました。というか、是非もっと実見したい。犬塚は絵画制作中に遭難死したそうで、まったく残念なことです。その他にも魅力的な画家たちが異様に若死にで、何か不思議なものを感じます。

それから、藤井達吉現代美術館のすぐ近くに清澤満之記念館があるのに気づいたので、これも訪れてみました。瀟洒な現代建築です。管理人の方が熱心に説明して下さって、こちらも(浄土)真宗の徒であり、書物ももっているので、これは読まないとなと思わされました。しかし満之は結核を患い、この碧南でわずか39歳で亡くなっているとは。えらい人はちがうものですが、それにしても若死にで気の毒でした。真面目で大変な秀才で、明治人という感じがします。

昼食は碧南のお好み焼き「福本屋」で「福本焼」ってのを食べましたが、おいしかった! ご当地グルメの焼きそばとお好み焼きのミックスで、タコやエビの風味がよかったし、お好み焼きがふわふわでした。デザートのイチジクのコンポートとバニラアイスってのもおしゃれでよろし。昼少し前だったのでそれほどは待ちませんでしたが、待っている人が結構多かった。ここ、ちょっとおすすめです。

全般的に今日は楽しかったですね。わりとゆっくり帰ってきたのですが、午後3時前に帰れました。総走行距離は 165km くらいかな。

今村仁司氏の「現代語訳」された清澤満之を読む。現代語訳でもこんなにむずかしいのかという感じ。さすがに東京帝国大学を首席で卒業した秀才である。とてもいまの自分にすらすらわかるものでないし、おそらく完全な理解は一生無理かも知れないが、それでもこれは理解しなくともいいとは思わない。なるたけ理解したいものである。というのは、ほんのちょっとはわかるから。僕は、清澤満之はもっと読まれていいと確信する。もっともっと、現代の秀才たちがアナリシスすべきであろう。
 それと同時に、自分のような、頭はあまりよくないがマジメな人(笑)こそ、清澤満之を読んでもらいたいものだとも思う。いまではまったく無意味な言い方になってしまったが、この人は徳の高い人である。マジメで本当にえらい人だ。本書の翻訳が格調高いせいもあると思うけれど、凛冽とした志の高い文章がここでは読める。つまりは、古典なのだ。どれほど満之を読む人が少なくても、末永く残っていく(べき)書物であると確信する。

現代語訳 清沢満之語録 (岩波現代文庫)

現代語訳 清沢満之語録 (岩波現代文庫)

引き続き読もう。