津村記久子『ポトスライムの船』

曇。
なかなかおもしろい夢を見る。それでつい寝坊。

それにしても派手にぶっ壊れたな。夕方になって何とか元気が出てくる。

図書館から借りてきた、津村記久子『ポトスライムの船』読了。僕がこの人にいちばん感心するのは、その文章である。淡々としているのに、こちらの気持ちを逆なでして、イライラした気分にさせられるくらいだ。こういう凶悪な文章を書く人は、なかなかいないのであるまいか。本書では、表題作よりも、「十二月の窓辺」の方がその文章の力を発揮しているように思える。それにしても、いまの女性たちは多かれ少なかれこんな感じで仕事をしているのだろうか。パワハラの極致なのに、自虐的になって会社を辞めることもできない。僕はよんどころない事情で人生をドロップアウトしてしまったので、社会人というのがどういうものなのか実体験するところがなかったが、どうも想像を絶する世界である。こんな目にあってまで既成ルートから下りられないというのは、大変なものであるな。とまあ、人間のクズが言っても説得力がなくて、ふつうの人生を送るのは大変ですねくらいしかいえない。最後、何とか主人公が辞められて個人的にはよかった(?)が、これって彼女は負け犬ということなのだろうか。
 表題作は芥川賞受賞作である。「十二月の窓辺」の後のエピソードだと勝手に思うことも可能だろう。主人公は前の会社を大変な「モラルハラスメント」の上に辞めて、いまでは奈良でバイトの掛け持ちをして生活している、微妙な年頃の女性である。事情が事情なだけに、ちょっと気持ちの平衡を欠きがちというか、まあはっきりいうとちょっと心を病んでいる感じだ。大学時代の友達は色いろで、バカっぽいのに結婚して幸せっぽく、それなのに(それだから?)うざそうな女(ヒドいね)とか、仕事ができたっぽいのに夫に辞めさせられ、さらにはその夫が選択ミスで離婚になりそうな女性とか、とにかく平穏でない。しかし、皆んなそんなに人生に疲れているの? まだ20代の女性でしょう、40代後半の KKNO とかに比べたらそれだけでよほど勝ち組だと思うのだが。何だかどうなっているのか、すてきな男性をゲットするという希望も捨ててしまっているのか(って自分は KKNO ですけれどね)。ただ本作は「十二月の窓辺」に比べたらまだポジティブな感じもして、そこらあたりが芥川賞なのかなとも思った。まあ人生など生まれて苦しんで死ぬだけだが、何のいいこともない一生というのもまずないですよ。仕事に疲れて自殺したって、いじめた奴らはピンピンしていてつまらないですよ。はっきりいうが、ドロップアウトする方がマシなのじゃねーかと、日本の諸問題の諸悪の根源であるとされるダメなおっさんは思いますですよ。

ポトスライムの舟

ポトスライムの舟