複素数の構成

複素数 z は、普通 z = a + bi(i は虚数単位)のように定義して得られるが、次のような構成論的方法でも導入できる。
まず、 として、複素数 (a, b) の和と積を、次のように定義する。
    
    
ここで、(a, b) が加法と乗法について単位元をもつことを示そう。加法単位元を (x, y) と置く。(a, b) + (x, y) = (a, b) より、加法の単位元は明らかに (x, y) = (0, 0) となる。逆元を A と置けば、(a, b) + A = (0, 0) なので、明らかに A = (-a, -b)。
次に、(a, b) が乗法について単位元をもつことを示そう。単位元を (X, Y) と置くと、(a, b)(X, Y) = (a, b) なので、
   
   
だから、これを X, Y について解いて、X = 1, Y = 0。よって(乗法の)単位元は存在して、(1, 0) である。また、逆元を (a, b)-1 = (X, Y) と置くと、(a, b)(X, Y) = (1, 0) だから、これを X, Y について解いて、
   
   
これが(乗法の)逆元である。
 ゆえに、複素数 (a, b) は複素数体 )をなす。
また、
   
   
   
より、 の元 (a, 0) と実数 a が一対一に対応するので、(a, 0) と a を同一視できる。ここで (0, 1) = i と置くと、明らかに i2 = -1。そして任意の複素数 (a, b) は
   (a, b) = (a, 0) + (0, b) = (a, 0) + (0, 1)(b, 0) = a + ib
と書ける。この i が虚数単位である。


※参考 杉浦光夫『解析入門 Ⅰ(基礎数学2)』p.40-41。

※追記
(a, b)(X, Y) = (1, 0) を X, Y について解くのをやっておこう。まず、
   aX - bY = 1
   aY + bX = 0
であるから、上の式の両辺に a を掛けて
   a2X - abY = a
これに aY = -bX を代入して
   a2X + b2X = a
したがって (a2 + b2)X = a だから、
   X = a / (a2 + b2)
となる。よって、aY = -bX = -ab / (a2 + b2) だから、a は任意であることより
   Y = -b / (a2 + b2)
が得られる。
もうひとつ。
   a(X, Y) = (a, 0)(X, Y) = (aX, aY)
もちゃんと云える。
また、定義より(積の)交換法則
   (a, b)(c, d) = (c, d)(a, b)
は明らかである。結合法則
   ( (a, b)(c, d) )(e, f) = (ac - bd, ad + bc)(e, f)
    = (ace - bde - adf - bcf, acf - bdf + ade + bce)
    = (a, b)(ce - df, cf + de) = (a, b)( (c, d)(e, f) )
より云える。分配法則は
   (a, b)( (c, d) + (e, f) ) = (a, b)(c + e, d + f)
    = (ac + ae - bd - bf, ad + af + bc + be)
    = (ac - bd, ad + bc) + (ae - bf, af + be) = (a, b)(c, d) + (a, b)(e, f)
より云える。